
【ニューヨーク=竹内弘文】米証券取引委員会(SEC)のアトキンス委員長は2日、ニューヨーク証券取引所で講演し、上場企業の重荷となっている開示規則を緩和して上場維持コストを低減する考えを示した。数カ月のうちに具体策を推進するという。米上場企業の減少に歯止めを掛ける狙いだ。
2日のニューヨーク証取の取引開始セレモニーで打鐘したのち、金融業界関係者らを前に講演した。セレモニーではトランプ米大統領の「MAGA(米国を再び偉大に)」をもじったスローガン「新規上場を再び偉大に(Make IPOs Great Again)」をあしらった赤い帽子をかぶった。
アトキンス氏は、1990年代半ばに7000社以上あった米上場企業が現在までに4割減少したと説明し「上場企業へ至る道のりがいかに狭く割高で、過剰な規制に縛られてきたかを示す」と述べた。
2000年代初期に発覚した会計不正への反省でできた企業改革法(SOX法)は投資家保護を強めた一方、開示コストを増大させたとの指摘がある。
米株式市場の魅力低下は「米国の競争力をむしばみ、投資家を活力ある企業(への投資)から締め出し、起業家の資金調達をプライベート(私募)市場や海外へと追いやってきた」ともアトキンス氏は指摘した。
開示規則の改革にあたり、2つの重点領域を挙げた。まずは開示要件を企業財務に関連した「財務的マテリアリティー(重要課題)」に根ざすことだ。投資家や利害関係者の意思決定に影響を与える財務情報をより重視すべきだとした。
もう一つは大企業よりも開示要件の緩い「中小・中堅企業」の定義を拡大することだ。区分となる基準値をSECが最後に改めたのは05年で、アトキンス氏は「見直しがなされなかったことで、時価総額わずか2億5000万ドル(約400億円)の企業が、その100倍の規模の企業と同等の開示要件を課される事態が生じている」と批判した。
開示コストの重さはかねて米経済界が主張してきた内容と重なる。一方で、開示内容を事実上減らすことは投資家から反発も出そうだ。
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