オープンAIのサム・アルトマンCEO=ロイター

【ヒューストン=赤木俊介】米オープンAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)が宇宙産業への参入を検討していることが明らかになった。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルが3日報じた。再利用可能なロケットを開発する米新興企業に対し資金提供と買収を持ちかけていたという。

アルトマン氏は米宇宙開発会社ブルーオリジンの元社員らが立ち上げた新興の米ストーク・スペースと2025年秋ごろまで買収に向けた協議を進めていた。オープンAIが数十億ドル分のエクイティ(株式)投資を進め、最終的には経営支配権を取得する案も浮上したが合意には至らなかった。

民間の大型ロケット打ち上げでは米起業家イーロン・マスク氏が率いるスペースXが先行する。米アマゾン・ドット・コム創業者ジェフ・ベゾス氏のブルーオリジン、米ロッキード・マーチンと米ボーイングが共同出資する米ユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)もロケット開発を進める。

民間のロケット事業は再利用ロケットが実用化したことで打ち上げコストが低下し、テック企業を中心に参入がしやすくなってきた。特に宇宙で人工知能(AI)向けインフラを構築するといった構想もある。アルトマン氏が参入すれば民間のロケット事業で新たな有力プレーヤーとなる可能性がある。

アルトマン氏は7月に出演したポッドキャスト番組でAI向けのデータセンターを「地球上に設置する意味はないのかもしれない」と述べた。11月には米グーグルがデータセンターを宇宙に設置する構想を発表し、半導体大手の米エヌビディアも画像処理半導体(GPU)サーバーを搭載した人工衛星の打ち上げを目指す米新興を支援する。

データセンターは電力を大量に消費する。米国のハイパースケーラー(大規模クラウド事業者)は廃炉となっていた原子力発電所の再稼働や、石炭火力発電所の延命を通して電力確保へ向け動いている。軌道上の衛星は太陽光で発電するため、データセンターを宇宙空間に設置することで地球上の電力消費を抑える狙いがある。

グーグルのスンダ―・ピチャイCEOは11月30日の米FOXニュースのテレビインタビューで宇宙空間でのデータセンターの運用は「10年後には当たり前になる」と話した。

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