ラジオNIKKEIのポッドキャスト番組「中国経済の真相」に出演した三浦祐介氏

中国軍の戦闘機が自衛隊機にレーダー照射をしたのをきっかけに、日中関係は軍事面でも緊張が高まっています。一方で、中国の上海市に開店した日本の回転ずし店「スシロー」は、6日の開業時に入店まで14時間待ちというにぎわいぶりです。2つの対照的な光景は、何を意味しているのでしょうか。

ニッセイ基礎研究所の三浦祐介・主任研究員はラジオNIKKEIのポッドキャスト番組「中国経済の真相」に出演し、高市早苗首相の台湾有事をめぐる発言を受けた日本への威圧強化は、習近平(シー・ジンピン)政権にとって「もろ刃の剣になる面がある」との考えを示しました。

中国経済は依然として、苦境から抜け出せていません。深刻な不動産不況を背景に、今年の夏以降は特に投資をはじめ内需が悪化しており、景気の減速が想定以上にきつくなるのではないかとの懸念が増えています。

習政権が経済面での対日威圧をいまのところ訪日自粛や日本産水産物の輸入停止にとどめているのは、そうした国内経済の不振を背景に「経済面では日本とのあつれきがこれ以上、深まるのを避けたいからではないか」というのが三浦氏の見方です。

ただ、中国の政府や共産党の組織は日本以上に縦割りで動いています。習政権が最優先する国家安全を所管する部門と経済を担当する部門は、それぞれ別々の考え方に基づいてバラバラに動いているのが実態です。

中国政府の経済部門の幹部が日本企業を訪れて「安心してくれ」と呼びかけた翌日に、国家安全部門がその企業に来てけん制する――。そうした事態が起きてもおかしくない、と三浦氏は心配しています。

さまざまな部門が習近平国家主席の意向を忖度(そんたく)して動いた結果、日本への威圧が行きすぎ、かえって中国経済を傷つけてしまうかもしれません。習政権が日本への威圧を強めるなかで値ごろ感があるスシローの盛況は、中国のデフレがそれだけ深刻になっている表れでもあります。

経済に不安を抱える習政権が、次にどんな手を打ってくるのか。予断は許しません。三浦氏の解説は以下のポッドキャストでお聴きいただけます。

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(編集委員 高橋哲史)

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