
【ヒューストン=赤木俊介】米アマゾン・ドット・コムは16日、通信用の人工衛星27基を載せたロケットの打ち上げに成功した。人工衛星を使ったインターネット通信サービスを2026年に始め、先行する米スペースXの「スターリンク」に対抗する。
米東部時間の16日午前3時過ぎ(日本時間16日午後5時過ぎ)に人工衛星を搭載したロケットを米南部フロリダ州で宇宙空間に向け発射した。
アマゾンの通信用人工衛星の打ち上げは4度目となる。ロケットの発射は米ボーイングと米ロッキード・マーチンの合弁会社ユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)が担当した。ロケットは地球の低軌道に乗り、打ち上げが成功した。
アマゾンは創業者のジェフ・ベゾス氏が進める宇宙開発会社「ブルーオリジン」とは別に、宇宙の人工衛星を使ったネットサービス提供に向け準備を進めている。これまで「プロジェクト・カイパー」の名称で計画を進めてきた。26年のサービス開始をにらみ「アマゾンLeo(レオ)」に計画名を変更してから初の打ち上げとなる。
アマゾンは携帯電話回線がつながらない地域でも人工衛星との通信を使ってネットに接続するためのアンテナ設備を公表し、通信速度に応じて3種類を用意した。一部の企業向けには試験サービスを始め、今後や個人や政府向けに通信サービスを拡大する。
アマゾンが展開する人工衛星は今回の打ち上げで計180基となった。今後80回以上の打ち上げで衛星を3000基に増やす方針だ。すでに米格安航空会社(LCC)のジェットブルーや物流企業の米クレーン・ワールドワイド・ロジスティクスなどがアマゾンの通信サービスを利用すると発表している。
先行するスペースXは既に9000基の衛星網を構築済みとされる。米起業家イーロン・マスク氏が率いる同社は再使用ロケットの技術を確立し衛星を送り続けてきた。衛星通信サービス「スターリンク」は日本を含む世界の大半の国々で利用できる。米国防総省など政府向けの衛星網「スターシールド」も提供する。
米ブルームバーグ通信によると、米アメリカン航空は機内のWi-Fiサービス提供についてアマゾンと協議を始めた。スペースXは米ユナイテッド航空や米ハワイアン航空と機内Wi-Fiで提携している。
アマゾンはスターリンクを追いかける立場だが、現時点では衛星の打ち上げにもスペースXのロケットに頼らざるを得ない状況で、両者の差は大きくなっている。
アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏はマスク氏と宇宙開発で競ってきた間柄で、直近ではベゾス氏が率いるブルーオリジンも大型ロケット「ニューグレン」の打ち上げに連続成功した。今後はニューグレンを使ってアマゾンの人工衛星を運ぶ可能性もある。
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