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English preface available here. 英語の序文はこちらから
The year of 2025 marks 80 years since the end of World War II, and the atomic bombings of Hiroshima and Nagasaki are once again being remembered as events that deeply shocked the world. Amid this, a message of anti-war sentiment expressing empathy for the hibakusha (atomic bomb survivor-witness) was sent to The Tokyo Shimbun. With the cooperation of Ms. Sachi SAKANASHI, Director of The Middle East Research Center (JIME Center) at The Institute of Energy Economics, Japan, we present a contribution by Dr. Mohammed Moussa, 42, assistant professor at Istanbul Sabahattin Zaim university in Turkey.

ムハンマド・ムーサー氏(本人提供)
◇ 寄稿〈「千羽鶴」…2025年にヒロシマとナガサキを思い起こす ムハンマド・ムーサー〉 日本の折り紙である千羽鶴は、もともとは幸運や病気からの回復を願うものであったが、いまでは世界の平和を祈る象徴へと変わった。20世紀におけるこの驚くべき変化は、80年前に日本に投下された2発の原爆のうちの1発のヒバクシャ(被爆者)だった12歳の少女、佐々木禎子さんに触発されたものだ。 禎子さんは原爆投下後の広島で生き延びたが、1945年末までに広島では14万人が亡くなっていた。1955年、放射線の影響による白血病と診断された禎子さんは、回復を願って千羽を超える折り鶴を折り続けたが、13歳の誕生日を迎えることなく亡くなった。
被爆者・佐々木禎子さんの折り鶴=2018年4月、米中西部ミズーリ州のトルーマン大統領図書館
2機のアメリカ軍B29爆撃機が1945年8月6日に広島、8月9日に長崎へ、目をくらませるほどの光と黒い雨という「死の商品」を投下して80年がたった今、ヒバクシャの数は10万人を切っている。近年の研究で、アメリカが「リトルボーイ」と「ファットマン」という、極めて当たり障りがない名前で呼ばれる新兵器の使用を決定したのは、敗北寸前の日本の帝国政府がすでに降伏条件をめぐる交渉に入っており、国土がアメリカ軍の爆撃で荒廃していた時期であったことが明らかになっている。8月6日午前8時15分、そして8月9日午前11時2分、数万人もの命が一瞬で奪われ、その後、何十万人もの人生に影を落とすことになった。 原爆の投下は、第2次世界大戦が終結に近づく中で、アメリカの軍事的優位を世界に誇示する行為であった。また、勤勉で創意に富みながらも残酷な人間の頭脳が生み出した「未曽有の大量破壊兵器」の威力を測るための実験でもあった、と解釈できる。これは、戦争によって解き放たれた帝国主義的な傲慢(ごうまん)さを示す、新たな兆候だったのだろうか。 この核兵器の惨禍を生き延びたヒバクシャたちは、過去10年間で2度、ノーベル平和賞を受賞している。2017年には非政府組織(NGO)「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)が、2024年には、ヒバクシャによって1956年に設立された日本原水爆被害者団体協議会(被団協)が受賞した。
広島・原爆ドーム(資料写真)
このような公的な表彰は、多くの政府や社会において、戦争における人間の苦しみを防ぎたいとの強い思いが存在することを明らかにするものである。核兵器禁止条約(のような国際条約の採択)から権力者に真実を語り続ける活動まで、ヒバクシャのような戦争の証言者は、世界各国の政府に対して、その道徳的な権威を及ぼしてきた。しかし、悲劇と希望の証言は、依然として「国家安全保障」と「現実政治」という高い壁に直面している。 戦争を生き延びた現代の証言者たちは、ルワンダ(1994年)、ボスニア(1992~1995年)、ミャンマー(2017年~)、ガザ(2023年~)などでの痛ましい暴力の体験を語り継いでいる。こうした紛争や戦争の悲しみを、より重い・軽いと序列化することはできない。 「すべての戦争を終わらせる戦争」や「武力によって得られる平和」という考えは、虚構にすぎない。2025年に広島と長崎を思い起こすことは、このような凶行の再発を防ぎ、同時に、現在進行中のジェノサイドへの直接的・間接的な加担について政府の責任を問わねばならないという切迫感を生み出す契機となり得る。「まばゆい閃光(せんこう)」は、なおも人類の未来に向けた千羽の鶴の飛翔(ひしょう)を覆い隠している。ムハンマド・ムーサー(Mohammed Moussa) 1982年生まれ。イギリス出身の政治学者で、英エクセター大で博士号を取得。現在、トルコのイスタンブール・サバハッティン・ザイム大の政治学・国際関係学科で助教授を務め、「非暴力の哲学と政治」や「ポストコロニアリズム」、中東に関する講義を担当している。2015~2016年には日本学術振興会の外国人特別研究員として訪日、東京外国語大に所属して研究や講演などを行った。
〈次ページ〉では寄稿の原文(英語)を紹介します。
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