
【ニューヨーク=佐藤璃子】米クレジットカード業界に暗雲が漂っている。米政権によるカード業界の高金利・手数料の是正を探る動きが加速。特にトランプ米大統領が主張するカードの金利上限が課されれば収益に大きな打撃を与えうるとの懸念からカード大手の株価は直近3週間で最大16%安と急落している。
主要なカード発行会社の10〜12月期決算では、米銀キャピタル・ワン・ファイナンシャルは売上高が前年同期比53%増の155億8300万ドル、純利益が95%増の21億3400万ドルだった。アメリカン・エキスプレス(アメックス)は、売上高が10%増の189億8000万ドル、純利益が13%増の24億6200万ドルとなった。
米カード大手のビザの売上高は前年同期比15%増の109億100万ドル、純利益が14%増の58億5300万ドルとなった。マスターカードの売上高は18%増の88億600万ドル、純利益は21%増の40億6000万ドルだった。マスターカードのマイケル・ミーバック最高経営責任者(CEO)は「マクロ経済環境は全体的に良好で、消費者と企業の健全な支出が継続している」と指摘する。
米政権「カード金利の上限を10%に」
堅調支出が業績を支えている一方、足元では米政権がカード業界に対する圧力を強めている。トランプ氏は9日、カード発行会社が利用者に請求する金利に1年間で10%の上限を設ける考えを示した。米議会に対してもカード金利の上限制定を呼びかけた。
米国では月々のカード利用で全額を支払わず、残高の一部を翌月以降に持ち越す支払い方法を選択する人が多い。カード利用者の約半数がこうした支払い方法に頼っているとの試算もある。未払い残高に課される金利負担を抱えやすくなっている。
ニューヨーク連銀によると、25年7〜9月期のカードの債務残高は1兆2330億ドルと過去最高だ。平均金利は年20%を超えるため、10%の上限が課されれば利用者の負担軽減につながる。11月の中間選挙を見据え、「アフォーダビリティ(価格の手ごろさ)」の改善を政策的な主眼に据えようとする米政権の狙いがある。
カード上限が実現すれば、収益の最大9割直撃も
高金利に苦しむ国民からは歓迎の声があがる一方、10%の金利上限が実現すればカード事業に強みを持つ金融機関の収益に影響を与えかねないとの見方が出ている。

米モーニングスターのアナリスト、マイケル・ミラー氏によると、米シンクロニー・ファイナンシャルでは売上高の9割超、キャピタル・ワンでは6割超、アメックスでは約25%をカード金利収入が占めているという。トランプ氏の主張が議会で通った場合「彼らの収益に劇的な打撃を与えることになり、カード事業全体の再構築が必要になるだろう」と警鐘を鳴らす。
カード会社側は採算性が悪化すれば、リスクの高い中低信用層への与信を絞らざるを得なくなると主張する。キャピタル・ワンのリチャード・フェアバンクCEOは「金利上限のような価格統制を導入することは、あらゆる消費者層におけるクレジットの利用機会を狭めることになる」と指摘した。
カード関連株は急落
株式市場でも懸念が広がっている。29日、キャピタル・ワンの株価はトランプ氏が金利上限について自身のSNSで投稿した9日比で12%、シンクロニーは16%下落した。

トランプ氏は議会に同提案を通すよう促しているが、現時点で目立った進展は見られない。専門家からは「議会が迅速に行動を起こす可能性は低い。カードのあり方が一変してしまうような結果を招きうるため、両党どちらの議員もリスクを冒したくないだろう」(投資銀行TDカウエンのジャレット・セイバーグ氏)と実現性を疑問視する声もある。
トランプ氏はビザやマスターカードといった決済ネットワークを提供する企業にも照準を合わせている。13日、トランプ氏は自身のSNSで2社による市場の寡占状態の是正を目指す法案への支持を呼びかけた。同日、両社の株価は前の日比4%下落した。トランプ氏の大統領就任から1年。26年のカード関連会社の業績や株価は、政策次第で大きく左右される展開となりそうだ。
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