
【ニューヨーク=佐藤璃子、吉田圭織】商品市場で金(ゴールド)や銀(シルバー)が急落している。ニューヨーク先物価格(中心限月)で金価格は19日、一時1トロイオンス4505ドルと前日の清算値から約391ドル(8%)下げた。銀価格も同16%下げ、いずれも2月初旬以来の安値をつけた。原油の高止まりを受けた金利高や、株安などで生じた損失補塡の売りが重荷となっている。
前日を含めた2日間の下げ幅も約1カ月半ぶりの大きさとなった。「安全資産」とされる金は地政学リスクが高まる局面で買われてきたが、米国とイスラエルがイラン攻撃を始める前の2月27日比では14%下げている。

要因の一つは金利上昇だ。米連邦準備理事会(FRB)が利下げ時期を遅らせるとの見方から米長期金利が押しあげられた。米10年物国債の利回りは19日、一時前日比0.07%高い4.3%台をつけた。金利の付かない金は債券の金利が上昇すると相対的に投資妙味が薄れる。
金融調査会社ローゼンバーグ・リサーチ創業者のデービッド・ローゼンバーグ氏は「経済成長率やインフレ見通しが引き上げられたことに加え、FRBが労働市場よりもインフレ抑制により重きを置いて見える点などを債券市場は好感しなかった。金利高と米ドルの強さが金や銀の価格を押し下げている」と指摘する。
原油高の影響を指摘する声もある。イラン攻撃で原油や天然ガスの供給不足が長引くとの懸念が高まり、米原油先物市場でWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)の期近4月物は一時1バレル101ドル台半ばと前日終値(96ドル台前半)を上回って推移した。
イスラエルのネタニヤフ首相による、イランはウラン凝縮や弾道ミサイルの生産能力を失っているとの発言や、トランプ米大統領が中東への地上部隊派遣についての問いに「どこにも部隊を派遣しない」と述べたことなどが伝わり、午後には下落した。しかし攻撃開始前と比べると、4割前後上昇している。
市場では「原油が主要な地政学的リスクのヘッジとして機能しており、安全資産としての貴金属に対する需要を抑制している」(英スクデン・フィナンシャルの調査責任者、ダリア・エファノバ氏)との声が上がっている。
金価格は最高値をつけた1月末(5600ドル台)からは2割安となっている。米調査会社ヤルデニ・リサーチを率いる著名ストラテジストのエドワード・ヤルデニ氏は急激な上昇の後に持ち高を手じまう動きが加速していると見ており、「(投資家が)最近の日本や韓国の株式市場での損失や、米国株式市場の一部でもみられた下落を相殺するために利益確定売りに動いた可能性もある」と分析する。
イラン攻撃前の2月27日の終値に比べて19日には日経平均株価が9.3%安、韓国総合株価指数(KOSPI)が7.7%下落した。調査会社バンダ・リサーチによると、個人投資家による金を売る動きが増えている。19日の取引時間の最初の2時間で280万ドル相当の金が売られたという。
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