欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長(写真は8月31日)=ロイター

【ストラスブール=共同】欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長は10日、ウクライナ侵略を続けるロシアが連れ去ったウクライナ人の子供について「拉致された全ての子供は戻されなければならない」と訴え、帰還実現に向けた首脳会議を開催すると表明した。フランス東部ストラスブールでの欧州議会本会議で、2期目初の施政方針演説で述べた。

フォンデアライエン氏は「ロシアを(停戦に向けた)交渉の場に着かせるために、さらなる圧力が必要だ」とし、19回目となる新たな制裁パッケージの準備を進めているとした。ウクライナの復興に必要な費用は「ロシアが支払うべきだ」とし、凍結したロシア資産の運用益をさらに活用する考えを示したが、資産没収は否定した。

パレスチナ自治区ガザでの人道危機の深刻化を招いているイスラエルに対し、EUは足並みがそろわず、これまで強い対応を打ち出せていない。フォンデアライエン氏は、イスラエルの極右閣僚や暴力的な入植者らに対する制裁を検討していると述べ、イスラエルとの自由貿易を定めた協定の部分停止も視野に入れているとした。

EUは外交政策などでは全会一致を原則とするため、迅速で効果的な対応に支障が出ることもある。フォンデアライエン氏は「全会一致の制約を打破すべき時が来た」と述べ、域内人口を勘案した特定多数決方式での意思決定の拡充も求めた。

EUがトランプ米政権と妥結した貿易交渉の内容には加盟国からも批判が相次いでいるが、フォンデアライエン氏は米国との関係を安定させ、混乱を回避するために必要だったと反論。日本が主導する環太平洋連携協定(TPP)を例に挙げ「国際的な貿易制度を改善するために、志を同じくする国と連携していく」と意欲を示した。

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