
思春期特有の体や性の悩みを抱える中高生らに正しい知識を届け、自分に合う生理用品などを選んでもらう取り組みが進められている。最新の製品を詰めた「保健室BOX」を学校に貸し出し、実際に手に取ってもらうもので「最初は消極的だった生徒も、関心を持って真剣に話を聞いてくれるようになった」と評判は上々だ。
フェムテックを校内展示「男子生徒も知って」
ドルトン東京学園中等部・高等部(東京都調布市)は今年2~3月、保健室BOXを設置した。生理用品のナプキンやタンポン、吸水ショーツ、月経カップを取り出して展示。デリケートゾーンのケア用品や妊娠・産後ケア用品、ピル飲み忘れ防止デバイスに加え、使い方などを説明するパネルも添えた。
女性特有の悩みを先進的な技術で解決する製品やサービスのことを「フェムテック」という。同校養護教諭の水野沙也嘉さん(32)は「フェムテックは流通し始めているが、あまり知られていない。最新の製品で勉強や部活に快適に取り組んでほしい」と説明する。展示することで「男子生徒が女性の体のことを知る機会にもなる」という。

従来の性教育では、避妊法や性感染症に主眼が置かれ、体のケアなど生活の質(QOL)の向上にはあまり目が向けられてこなかった。そこで産婦人科医や学校の養護教諭らが一般社団法人「保健室BOX」(埼玉県坂戸市)を2025年5月に設立。以前からの活動を含め、希望した学校など20カ所にBOXを貸し出してきた。
メンバーの一人で埼玉県立高校の養護教諭、出水香織さん(42)は「何となくナプキンを使い続けるのではなく、いろんな製品を見て自分に合うものを選んでほしい。包括的な性教育への転換が求められる中で、大切な観点になる」と強調する。
出水さんが実際に展示を体験した生徒と養護教諭にアンケートをしたところ、教諭の9割がフェムテック製品の展示が必要と回答した。高校生のうち7割強も展示を希望した。実際に見た生徒からは「活用してみたい」「親から知識を得ることがあるけれど、知らないものもたくさんあった」と感想が寄せられた。
「全ての学校に広げたい」
BOXは一つあたり作製に約35万円かかり、学校への往復送料は1万~2万円になる。今後は男性用の精子セルフチェックキットや陰部ケア用品、育毛剤など「メンテック」製品も充実させる予定だ。

産婦人科医で、団体の代表理事を務める石原理・埼玉医大名誉教授は「本来は学習指導要領を変えて、性教育の充実を図るべきだが、時間がかかる。全ての学校にある保健室を舞台に、草の根で現場の教育レベルを引き上げていきたい」と話す。小学校の高学年にも広げたいという。
活動を広げるため、200万円を目標額にクラウドファンディング(https://camp-fire.jp/projects/854947/view)を開始し、協力を呼びかけている。【渡辺諒】
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。