
凝 夏-Unsplash
<「性の健康」特に中絶に関する誤った情報が氾濫しているTikTok。「有害な誤情報」はポリシー違反だが、「個人の経験」の共有は認められていて──>
TikTokにおける「性の健康」に関する投稿の多く――特に中絶に関する内容は、誤情報や危険なアドバイスに満ちている。
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この結果は、アリゾナ大学医学部の学生アンジェリ・シリランが主導した横断的研究によるもので、15歳の少女を装ったTikTokアカウントを作成して調査が行われた。
これまでの研究では、若年層の約4割がTikTokをニュースの情報源として利用しており、特に若い女性が意図的または無意識のうちに健康情報を得る手段として同プラットフォームを利用していることが示されていた。研究チームは、そうした現実を踏まえたリアルタイムでの検証を試みた。
「TikTok上の性と生殖に関する教育を分析した研究は非常に少ない。しかし多くの若者がTikTokや他のSNSを主な情報源として見ているのが現実だ」と、シリランは本誌に語る。
研究チームは3月25日に15歳の少女を想定したアカウントを作成し、医療専門家による投稿かどうかにかかわらず、動画の医学的正確性を検証するために調査した。
その後、性と生殖に関する10のキーワードに基づいて表示された英語の動画のうち、動画の長さが3分以内の上位10本について、2人の評価者が独立して内容を精査。合計100本の動画について、各評価者が「正確」「不正確」「中立」のいずれかに分類した。
その結果、医療従事者以外が作成した動画の21.4%に不正確な情報が含まれていたのに対し、医療従事者による動画ではその割合がわずか3.4%にとどまった。
不正確な情報の内容は多岐にわたっていたが、なかには中絶を誘発する危険なアドバイスも含まれていたという。また、「性感染症(STD)の予防や感染経路に関する誤情報が見られたが、それらは科学的根拠に基づいていなかった」とシリランは本誌に語っている。
さらにシリランは、「学校教育における健康教育の質にばらつきがある現状では、多くの若者がTikTokのようなオンラインプラットフォームに答えを求める傾向がある。だからこそ、性と生殖に関する教育と、SNSリテラシーの両方を高める取り組みが、教育者や保護者、そして公衆衛生の専門家にとって急務だ」とコメントしている。
中絶に関連する検索ワードで表示された動画のうち、4分の1以上(26.7%)に不正確な情報が含まれていた。これに対し、「その他の医療系動画」で誤情報が含まれていた割合は4.3%にとどまった。
研究チームはまた、投稿者が医療従事者かどうか、安全性に問題のある行動を助長していないかどうかについても評価を行った。調査対象となった動画のうち58%は医療従事者によって作成されたものであり、これらはより正確な傾向が見られた。
「中絶の方法」「流産の誘発」「中絶薬」といった検索語では、不正確な動画の割合が特に高く、これらのワードが危険な行動を助長する動画と結びついていたと研究チームは報告している。
TikTokによれば、ユーザーは自身の医療体験について投稿することが認められており、ただし有害な誤情報が含まれていないことが前提となる。なお、こうした動画の中には、助言としてではなく、あくまで個人的な経験の共有を意図したものもあると考えられる。
研究チームは、TikTokが若年層にとって生殖に関する情報へのアクセスを広げる「有用なツール」になり得ると認めており、実際に医療従事者が制作した動画は、同プラットフォーム上でもっとも信頼性の高い情報源であることが多いと述べている。
「今後もソーシャルメディアが主要な情報源として使われ続けるのは確実だ。だからこそ、医療従事者が正確な情報をオンラインで発信し続けることが重要になる」と、シリランは語る。
一方で研究者らは、中絶に関する情報には特に誤情報の拡散が目立つとして、医療従事者がより注意を払うべき分野だと指摘。また、誤情報を含む動画へのより厳格な監視体制や、プラットフォーム側の責任を含む対策の必要性にも言及している。
さらに、性の健康に関する誤情報への接触が、リスクの高い行動につながる可能性がある点も懸念材料として挙げている。
TikTokでは、命に関わる病気に対する適切な医療を妨げるような不正確な医学的助言、あるいは個人の健康に悪影響を及ぼすおそれのあるその他の誤情報を「有害な健康関連の誤情報」と定義している。
こうしたコンテンツは、コミュニティガイドラインに違反するものとして削除の対象となると、同アプリは説明している。
研究チームによれば、すべての評価は偏りを排除するため、各評価者が独立して実施した。その判定の信頼性は統計的手法によって算出されており、情報の正確性に関する評価の一致率(いわゆる「評価者間信頼性」)は98%だったという。
TikTokは現在も、ユーザーがオンライン上で接するコンテンツを見極め、理解するための「デジタルリテラシー教育」に注力しており、「誤情報」に関するポリシーについては同プラットフォームの特設ページでも確認できるとしている。
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