プリベントメディカル株式会社の久米慶社長(左)と株式会社先制医療推進の中川裕太社長。救えるべく命を増やすために、さまざまな研究機関や団体とも協業しながら、がんの早期発見・早期治療を実現するための「先制医療」の普及に奔走している

<予防医療事業を展開するプリベントメディカル株式会社が、株式会社先制医療推進機構とともに開発した組合員限定のがん共済「アイリス」とは>

救えるべく命を救いたい、たどり着いたアプローチ

1981年以来、40年以上にわたって日本人の死因のトップとなってきたがん。医療技術の進歩や新薬の登場もあるが、今も年間30万人以上が命を落とす病気だ。

「この国にはもっと救えるべく命があります」──こう話すのは、予防医療事業を展開するプリベントメディカル株式会社の久米慶社長だ。

「早期発見と早期治療、それががんから『命を守る』重要なキーワードです。がんに罹患しても、少しでも早く治療できれば、それだけ治癒率が高まるからです」

早期発見のためには、定期的にがん検診を受けることが大切だ。一般に、がん検診は対策型検診と任意型検診のどちらかに大別される。対策型検診は、大腸がんの便潜血検査や肺がんのX線検査などがあり、これらは会社の定期健康診断や自治体の助成対象など安価な費用で受検可能だが、検査の種類が限られる。

それに比べ任意型検診は、CT、MRI、エコー、PET、内視鏡など様々な検査種類があるものの、保険が効かず全額自己負担となるのが原則だ。例えば国立がん研究センターの総合がん検診費用は男性12万4800円女性15万7800円。これにPETを加えると1回20万円を超える。久米社長は言う。

「日本国内の人口100万人あたりのCTの設置台数は116台と米国の2.6倍(2020年)で、世界一位の設置台数を誇っています。しかし、そのような医療資源を活用できているのは、医療メディカルクラブなどに入会できる国内一部の富裕層か、医療メディカルツーリズム等の海外富裕層が多くを占めているのが現状のように思います。そのような背景から、未病分野における日本の医療には大きな医療格差が存在しているのではないかと考えるようになりました」

そこで、「任意型検診をもっと多くの方が費用を気にせずに受けられるような仕組みを作ることができれば、国内のがんの早期発見率を上げることができるのでは」と考えたという久米。たどり着いた答えは、簡易な尿検査を入り口にする、というアプローチだった。

「尿検査なら自宅でできますし、費用も抑えられます。そして検査でリスクが高かった人は任意型検診を無料で受検できる保険のような仕組みも構築しました。つまりこの尿検査サービス料金の中に保険のような予算を計上しておき、高リスク判定がでた方の任意型検診の費用を捻出できるようにするという考え方です。検査を受けた方の相互互助で任意型検診費用を支えあうという仕組みです」

ただし、この仕組みは検診費用を給付する費用保険ではないため、任意型検診を無料受検できる役務サービスにする必要があった。そこでプリベントメディカルでは、国立がんセンター、がん研有明病院など全国700か所以上の医療機関と提携。最大20万円までの任意型検診を無償でサービス提供できる体制を構築した。

また、「尿検査リスク判定→任意型検診無償」というビジネスモデルを疾患早期発見情報処理装置、情報処理及びプログラムとして特許の取得(特許第6781731号)にも成功した。

ALA-PDS検査用の検体は、マイナス80 度での保存が可能な専用の冷凍庫で厳重に管理されている

さらに尿検査として久米が注目したのは、5-ALAを使用したALA-PDS(Photo-Dynamic-Screening)というがんリスク検査技術だ。天然アミノ酸の一種である5-ALAは、内服すると正常な細胞ではヘムというタンパクに変換されるのに対し、がん細胞では蛍光を発する物質(ポルフィリン)に変換される性質を持つ。このポルフィリンは、青色の可視光を当てると赤色に蛍光を発することから、がんの診断方法として臨床応用されている。

ALA-PDSでは、5-ALAを摂取後の、尿として排出されるポルフィリンの量を分析。採尿後、青色光を当てて蛍光強度を測り数値化しリスクを評価する。プリベントメディカルでは、100%子会社としてプリベントサイエンス株式会社を設立。東京都中央区の保健所に衛生検査所(29中中生医第556号)としての登録を受け、ALA-PDS検査を実用化させた。

ALA-PDS検査専門の担当者が、全国から届く検体を分析。専用の検査装置でがんリスクを算出する

「がん共済アイリス」の画期的ながん対策サービス

また、プリベントメディカルは2024年に、株式会社先制医療推進機構と業務提携し新規事業を開始。先制医療推進機構では、2025年より「共済型」サービス提供にも乗り出している(雇用形態に関わらず誰でも個人で加入できる労働組合として2024年に誕生したさくら労働組合と連携)。組合員限定のがん共済「アイリス」として、がん保険と検査サービスが融合したような、新しい発想のサービス提供を開始した。

この共済の加入者は年に1回ALA-PDS検査を無料で受検でき、その検査結果に応じて5万〜20万円のがん検診費用が加入期間中毎年保障される。がんと診断された場合は一時金として100万円を受領でき、入院治療費は無制限で全額保障。通院治療は2000万円まで標準治療でも自由診療でも実費を全額保障されるプランとなっている。このサービス内容で、月額掛金は30歳男性4050円、30歳女性4800円という価格設定だ。

一般的な掛け捨てのがん保険は自身ががんになる以外掛け金の「元を取る」方法はないが、アイリスは専用のオンラインショップで使えるポイントを掛金の100%率にて付与される(月5000円の掛け金なら5000ポイント付与される)。このポイントで食品や日用雑貨を安く購入できるようにすることで、共済掛金の実質負担を軽減できる設計となっている。さらにアイリス加入者専用アプリにて日々の歩数と連動してさらにポイントが付与されるサービス提供の準備も行っている。

先制医療推進機構の中川裕太社長は「がん保険の国内市場は、加入数2535万契約で年間保険料は2兆6848億円(『2020年生命保険の動向』生命保険協会資料より)という巨大な規模です。こちらの仕組みはがんになった場合の治療費等を加入者皆で支えあうというものですが、病気になる前の予防医療分野においても相互扶助にてがん検診を受診しやすい仕組みを構築できるのでないかと考えました。」と話す。

「一般的ながん保険に入っているだけでは、がん死亡率が減少するものではないと思いますが、アイリスの場合は毎年検査を受けられるサービスがあるため、こちらは普及すればするほどがんを早期発見できる方が増え結果としてがんで亡くなる方を一人でも多く減らす事に期待ができるのではないかと考えております」

久米、そして中川の尽きないアイデアの源泉は、「救えるべく命を救いたい」という共通の思いに凝縮されている。

●問い合わせ先/プリベントメディカル株式会社
https://preventme.co.jp/

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