千葉県いすみ市で昨年10月、ローカル線「いすみ鉄道」が脱線する事故があり、国の運輸安全委員会は2日、事故原因などをまとめた調査報告書を公表した。腐食やひび割れのある枕木が連続し、レール幅が広がり、脱線につながったと指摘。同社の保守体制は「技術力不足」として、管理方法の見直しなどを勧告した。

  • いすみ鉄道脱線「レール幅拡大など原因」運輸安全委 枕木の交換開始

 事故は昨年10月4日に発生。午前8時6分ごろ、いすみ市内を約41キロで走行中の2両編成の列車が右カーブで、八つの車軸のうち六つが左側に脱線した。乗客104人と運転士1人にけがはなかった。

 報告書によると、事故現場周辺のレールでは17カ所で社内規定の補修基準を超えていたが、未対応だった。レールに付く枕木も計21本のうち9本が損傷し、3本はレール幅を保持する機能が失われていた。

 同社は社内規定でレールの幅や高低差などの補修基準を定めている。事故8カ月前に委託業者が全線で行った機械検査では1656カ所で基準を超えたが、その後に同社が行った再調査は手動で行ったため、測定位置がずれ、基準超えは462カ所に減少。さらに施工能力や予算の関係で、内規の期限内に補修を終えたのは23カ所だった。

 報告書は「再検査の測定位置の特定が不十分で、値が小さくなる誤差が発生した可能性がある」と指摘。補修基準や体制の見直しや、枕木を木製からコンクリート製へ変えるよう求めた。

 報告書では地域鉄道に共通する課題として、鉄道事業が小規模なため軌道整備の費用や能力を十分に確保できず、「組織としての技術力の維持、向上が困難である」と指摘。国や自治体から財政面などでの協力を受け、社外の技術支援などを活用することが望ましいとした。

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