
希少な動物とふれあえる「野生動物カフェ」で、けがや感染症の予防策などが十分でない不適切な管理が横行していることが3日、世界自然保護基金(WWF)ジャパンの調査で判明した。新型コロナウイルス禍で指摘されたように、野生動物との濃厚接触は「感染症の温床」と懸念される。店側と客側双方の意識向上に加え、法規制の強化が求められそうだ。
WWFジャパンは6~7月、野生動物を10頭以上展示していることがインターネット上で確認された、東京都▽千葉県▽神奈川県――の計25店舗を覆面で訪問調査。展示・販売されている動物の種類と数のほか、従業員の立ち会いの有無や、柵や手洗い場の設置状況などを点検した。
展示が確認された野生動物は計1702頭で、うち459頭はシロフクロウやコツメカワウソなど絶滅が危惧される種だった。鋭い爪と牙が特徴のミーアキャットなど、接触でけがをする危険性の高い動物を23店舗が扱っており、柵を設置して直接触れないようにすることが望ましいが、このうち19店舗は、柵がなかったり、従業員の立ち会いがなかったりと、けがの予防策が不十分だった。
半数近くが「手洗い場なし」
感染症対策の面でも問題が浮かび上がった。
展示動物の体表をぬぐって採取した検体を分析した結果、計137種類の細菌が検出された。このうち、O157に代表される腸管出血性大腸菌が4店舗▽胃腸炎や腸チフスを引き起こすサルモネラ菌が2店舗▽抗生物質が効きにくいブドウ球菌の一種が7店舗――で確認された。
感染症対策の要となる手洗い場を11店舗が設置していなかった。手指用消毒液を置いていない店も1カ所あった。客の入店時、23店舗で従業員が手指消毒を呼びかけていたが、退店時に呼びかけていたのは14店舗にとどまった。店側が人から動物への感染は気にしても、動物から人、さらに人から人への感染を軽視している傾向がうかがわれた。

過去の調査から、日本には野生動物カフェが約100店舗はあるとみられている。海外では飼育や接触が制限される種でも日本では自由度が高く、愛好家の間で「野生動物カフェ大国」との認識が広がり、外国人観光客の来店も目立つ。
一方で、2023年に野生動物カフェを禁止した韓国などと比べ規制は緩いという。調査結果をまとめたWWFジャパンの浅川陽子さんは「展示・販売は希少種の乱獲と絶滅リスクを高め、人にとっては負傷や感染のリスクを高める恐れがある」と語る。
獣医師でもある石塚真由美・北海道大獣医学研究院教授(毒性学・法獣医学)の話
同じペットでも人間社会に定着し、病気なども分かっているイヌやネコと違い、野生動物は共生している細菌やウイルスの実態がほとんど分かっていない。野生動物カフェは感染症の温床といえる。動物とのふれあいは人には癒やしになるかもしれないが、動物には大きなストレスになりうる。動物愛護管理法など関連法の規制強化が必要な時期を迎えている。【田中泰義】
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