国立大学病院長会議は3日、全国42国立大病院の2025年度の収支の見通しについて、経常損益が全体で400億円超の赤字となる可能性があると発表した。物価や人件費の上昇が響き、赤字幅は24年度の286億円から拡大。04年度の法人化以降で最大となる。

国立大学病院は臓器移植をはじめとした高度医療の核となっており、医師の育成でも重要な役割を担う。経営悪化によってこうした機能が弱まれば、日本の医療全体に影響が及ぶ可能性がある。
同日の記者会見で、会長の大鳥精司・千葉大学医学部付属病院長は「国立大学病院は過去最大の危機を迎えていると言っても過言ではない」と述べた。
同会議によると、25年4〜6月の実績から25年度の収支状況を推計。25年度は42病院のうち33病院が現金収支で赤字となる見込みだ。24年度に赤字となったのは25病院だった。
医師の働き方改革や処遇の改善により、人件費が24年度から6%増加するほか、医薬品や診療に使う材料の価格上昇で医療費が4%増えると推計した。
一方で支出を抑えるため、医療機器の更新など施設・設備費は27%減少するとした。
会見に出席した熊本大学病院の平井俊範病院長は「更新の時期を過ぎた機材が(同病院で)2820個、計181億円分ある。大学病院が担う高度医療に支障が少しずつ出てきている」と話した。
政府に対しては、赤字からの脱却に向け、診療報酬の大幅な改定などを要望。26年度以降の予算の充実に加え、すでに危機的な経営状況に陥っている大学病院も多いことから、早急な補正予算の編成と教育研究への支援強化を求めた。
大学病院は国立以外でも経営状況が悪化している。全国医学部長病院長会議は9月、全国81の国公私立大学病院について、24年度の経常損益が全体で508億円の赤字になったと発表した。
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