コミュニティ診療所をオープンする今田真穂さん=紀美野町で、安西李姫撮影

 和歌山県紀美野町動木の空き古民家に「コミュニティ診療所」をオープンする準備が進んでいる。現在改装を進めている古民家は100年ほど前に診療所だったとされ、地域の医療拠点を兼ねたコミュニティースペースに再生させる。11月1日の開業を目指しており、運営するNPO法人の代表で看護師の今田真穂さん(40)は「実家のようにホッとしてもらえる雰囲気の場所をつくりたい」と話す。【安西李姫】

 診療所名は「いつきのくに診療所」。開業時の診療科目(各種保険取り扱い)は総合内科、小児科、精神科、心療内科で、まずは週2回医師が診察できる態勢を整える。病児保育事業も町と連携して来年にはスタートさせたい計画という。

 今田さんは海南市出身で、2023年12月に兵庫県西宮市から紀美野町に移住した。看護師として病院勤務などをしながらさまざまな患者と向き合う中で、新型コロナ禍で改めて心身の健康について考えたという。不調の背景の一つには生活の中の孤立があると感じたことが、コミュニティ診療所をつくる原点になった。

 自身がワンオペ育児で苦労した経験から、困った時に「助けて」と言える場所があることの重要性も痛感。紀美野町に移住後は月2回ほど、老若男女が畑仕事をしたり食事をしたりしながら、生きづらさを打ち明けられるイベント「いつきのくに」を開いてきた。診療所は地域住民に開かれた場にすることで、孤立や子育て、不登校など地域課題の解決にもつなげたいとしている。

 今年7~8月に診療所の開業費用をクラウドファンディングで募ったところ、全国から1000万円以上が集まった。地元住民が取り次いでくれた約300平方メートルの空き古民家を改装中で、10部屋以上を診療所、居場所作りのスペースと動線を分けて活用する。

コミュニティ診療所に改装中の古民家=紀美野町で、安西李姫撮影

 「古き良き幸せな時代に日本中にあった、懐かしいような暮らしを大切にしたい」とする今田さん。「薬をもらいに行って依存するような病院ではなく、対話のできる診療所が理想。関わる地域の皆さんが生きやすくなったなと思ってほしい」と笑みを浮かべる。

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