京都府長岡京市など乙訓地域の名産「京たけのこ」が害虫被害に苦しんでいる。地域の竹林に、外来種「シナチクノメイガ」など蛾の食害が広がっているためだ。タケノコの生産量は減少しており、平安期にさかのぼる「乙訓と竹」の関わりに影を落としている。
「最初は、竹林の色がいつもと違うなと感じました」。長岡京市のタケノコ加工業者「小川食品工業」の小川修司社長(69)が異変に気づいたのは、2023年秋だった。青々としているはずの竹林の一角が褐色に変わり、翌年の初夏には、幼虫やフンが目立つようになった。
小川さんは幼虫を捕まえるなどし、府は昨年7月、府内のシナチクノメイガなどの被害として初めて認定した。府農産課によると、中国原産とされる外来種で、国内では2020年に愛知県で初めて見つかり、今年は大阪府の北摂地域でも確認された。幼虫が竹の葉を食べてさなぎになり、成虫は羽を広げると3~4センチほどになる。
タケノコの生産量も落ち込んだ。長岡京市によると、市内の出荷量は昨春の約3万4千キロから今年は約1万7千キロに半減した。虫の被害に加え、豊凶の周期や気候の影響もあり、乙訓地域全体で生産量が落ち込んでいるという。小川さんは「親である竹が生き残るために栄養を回すので、子のタケノコを作り出す余裕がなくなる」という。
乙訓地域と竹の関わりには長い歴史があり、平安期にさかのぼる。市によると、かつては幕府への竹材の上納を担い、いかだにして大坂(大阪)に出荷するなどしていた。
19世紀以降には、肉厚な「モウソウチク」という竹の栽培が盛んに。粘土質の土壌を生かした「京都式軟化栽培法」によって、白色で柔らかい食感が特長の「京たけのこ」が定着した。戦後の都市化により府内の竹林は減っているが、長岡京では農家が竹林を守り続けてきた。
深刻な被害に、府も対策に乗り出した。今年9月、別の害虫に使っている殺虫剤を、特例でシナチクノメイガなどを使用可能にした。また、林野庁や大阪府、JAなどと協議会もつくり、調査や対策の検討を始めた。
1927年創業の老舗の小川さんの会社では、年間1千トン規模だった原料が近年500トン台に。昨春は100トンで、通年で稼働するはずの工場を半年以上止めた。レンコンやトウモロコシの加工をしているが、本業を埋めるには及ばないという。
小川さんによると、手入れの行き届いた竹林ほど柔らかい新葉が育つため、幼虫に好まれ、枯れてしまうという。「昭和2年から続く家業。何とか続けたいが、3年不作が続けば本当に厳しい」
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