7月3日に福島市仁井田の荒川で目撃されたツキノワグマ=同市提供

 相次ぐツキノワグマによる被害を受けて、福島県は16日、県庁で緊急の関係部局長会議を開いた。会合では、溝口俊夫・県野生動物調査専門官(獣医師)が「十数年に一度の異常状態にある」と危機感を訴えた。

 溝口氏は、今年度はクマの餌となる栄養豊富なブナ、ミズナラ、コナラが凶作で「(餌を求めて)非常にクマがナーバスになっている」と説明した。

 一方で、昨秋はこうした堅果類が豊作だったためクマの出産が増えており、子連れのクマや若いクマが人里に多数出没していると分析。さらに「今後、わずかな餌の奪い合いが続き、そうした餌も足りなくなると、(それまで餌の奪い合いに勝利していた)大きなクマが里地に出没する可能性がある」と述べ、秋以降も市街地に餌を求めて出没するクマが増加する可能性があるとの懸念を示した。

 また、体重が増やせずに空腹状態にあるクマは冬眠に入りにくく、「今後の状況を確認し、必要があれば冬季にも警報を発出して県民に注意を促していく」などとした。

 クマによる人身被害を防ぐための対策では、「クマの嗅覚は犬の数倍で10キロ先のものをかぎ分けることができるとされる」と指摘。人里にクマを引き寄せるリスクとなる集落のクリや柿の実を除去し、倉庫での穀類や米ぬかの保管を厳重化する必要性などを挙げた。花火や外で活動する際には手を鳴らすなどの方法も有効だとし、クマから命を守るための10項目の対策を示した。

今秋のクマの出没状況について「十数年に一度の異常状態」と述べる溝口俊夫・県野生動物調査専門官(中央)=福島市の県庁で2025年10月16日午後4時35分、岩間理紀撮影

 さらに溝口氏は、仮に遭遇した際には「クマは視力が弱いため、ゆっくりと後ずさる」、「クマは顔を攻撃してくるため、地面に顔を突っ伏し、首筋を守って致命傷を避ける」と対処法を挙げた。

 「里に出てくる『クマの人慣れ化』に加えて、どうせこの地域にはクマがいるんだろうという住民も多く『人のクマ慣れ化』も起こっている。今は十数年に1回の状況にあると認識してほしい」と警戒を呼びかけた。

 溝口氏がまとめた10項目の対策は、県のサイト(https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/16035b/kumasyutubotu.html)で閲覧できる。【岩間理紀】

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