小袋に、小魚とアーモンド、ヌーナッツが入っている=梅田麻衣子撮影
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 小魚とナッツが小袋に入ったお菓子は、おやつや給食、おつまみの定番。食べ飽きない組み合わせの妙に加え、栄養価も高くて、ありがたい存在だ。でも、海の幸の小魚と森の恵みのナッツが、一緒にお菓子になったのはどうして? 実りの秋、スイスイッと気になる木の実に迫りたい。

栄養も◎ 黄金タッグで学校給食に

 小魚とナッツと聞いて思い浮かぶのは、ネーミングも印象に残る「さかなっつハイ!」。ほんのり甘い小魚に、香ばしい粒のアーモンドとクリスピー感のあるヌーナッツ(脱脂ピーナツ)を組み合わせた小袋入りのお菓子で、今年で発売40周年を迎えたロングセラー商品だ。製造・販売している、東洋ナッツ食品(神戸市東灘区)企画グループの大津山リカさんに話を聞いた。

東洋ナッツ食品企画グループの大津山リカさん(左)と「さかなっつハイ!」のキャラクター、さかなっつくん=梅田麻衣子撮影
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 「さかなっつハイ!」の発売は1985年。同社の研究員が「海産物とナッツを組み合わせたら、味も栄養的にも良い商品になるのでは」と開発に着手した。「この研究員は大学の水産学部出身だったんです。会社としても、今までにないものを作ろう、という思いがあったようです」と大津山さんが説明する。小魚を入れるため、当時主流だった缶や大袋ではなく、食べきりサイズの小袋に入れて、風味を落ちにくくした。

 この小袋が功を奏し、人気を集める。保存や持ち運びが簡単で、晩酌のおつまみ、旅行のおやつなど、幅広い用途で手軽に食べられるからだ。発売から数年で、各地の学校給食などにも採用された。あまりの人気に製造が追いつかず、工場のラインを24時間稼働したこともあったという。

小魚へのこだわり、動画でも

小魚はカタクチイワシ=梅田麻衣子撮影
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 気になっていたのが、ナッツメーカーなのに、小魚の扱いが上手なこと。味や大きさが絶妙で、小魚のかけらが歯茎に刺さることがあまりなく、苦みも少ないですね。「使っているのは瀬戸内海などで水揚げされた国産のカタクチイワシ。食べやすいように、小ぶりのものを使っているんですよ」と大津山さん。オリジナルオイルでコーティングしてDHA(ドコサヘキサエン酸)などの成分を加えるとともに、小魚の水分がナッツに移らないよう気をつけている。

 小魚へのこだわりは、思わぬところにも表れている。40周年を記念して、魚の生態や魅力をイラスト、音楽などで紹介している「さかなのおにいさんかわちゃん」とタッグを組み、ミュージックビデオを作成。動画サイトで公開している。歌詞には「すぐにまわりに食べられる」「基本右向きに泳ぐ」など、カタクチイワシの生態も盛り込まれている。「生態系にも『さかなっつハイ!』にも欠かせない、イワシそのものにも注目してほしいと考えました」と大津山さんは話す。

 30年ほど前から歌われている「さかなっつ音頭」という楽曲もある。「♪さかなっつハイ!ハイ!」という親しみやすい歌詞とメロディーが耳に残り、思わず口ずさんでしまいます。こちらも動画サイトで公開中。簡単な振り付けがあり一緒に踊ることができる。

美容効果に注目

東洋ナッツ食品の「さかなっつハイ!」=梅田麻衣子撮影
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 「さかなっつハイ!」は1箱30袋入りで販売されている。家族・友人とシェアして食べられるのがいいですね。ビタミンDやカルシウムなどがとれるため、栄養補給や美容効果も注目されている。シリーズには、縦割りのアーモンドとピーナツが入った「スクールランチ」、カシューナッツと昆布とのハーモニーが楽しめる「こんぶとカシュー」もある。

 東洋ナッツ食品は、59年に創業された日本初のナッツ専業メーカー。もともと輸入業を営んでいた創業者の中島泰介さんが、健康に役立つ商品をと考え、栄養豊富なナッツに着目した。現在はアーモンドやクルミなどさまざまなナッツを取り扱っている。

 世界から厳選した素材を仕入れ、ナッツの種類や用途によって最も適した加工法を研究し続けている。「焦がしキャラメルナッツ」シリーズは、深煎りしたピカンやカシューナッツなどの香ばしさをキャラメルコートが引き立て、高級スイーツのよう。国内でいち早く販売を始めた食塩無添加のナッツは、種類ごとに焙煎(ばいせん)方法を変え、素材のおいしさを引き出している。

 近年、ナッツの健康効果に注目が集まっている。「半世紀にわたる加工技術の蓄積をベースに、目指すは世界最先端のナッツメーカー。ハートある技術でナッツの新境地を切り開いていきたいです」と大津山さん。品質もハートもハイクオリティー!

アーモンドの「お花見」人気

 会社に足を運ぶと、庭にアーモンドの木が枝を広げている。桜にそっくりな花が、少し早い3月中旬ごろに開花する。創業者の中島さんが写真でしか見たことがなかったアーモンドの花を「従業員と一緒に見たい」と1978年に植えた。2年後に開花し、しばらくは従業員で花見を楽しんでいたが、やがて近所の人も訪れるように。さらに多くの人にめでてもらいたいと、86年から開花時期に合わせて「アーモンドフェスティバル」を開催している。オリジナルのナッツフードや商品を販売し、人気を集めている。

 会社外側のフェンスには、「さかなっつハイ!」のパッケージやキャラクターの「さかなっつくん」をデザインした看板が設置されている。年代別に描かれており、順に見ていくと、さかなっつくんが少しずつ変わっているのもわかる。初代は目も唇も黄色で、とぼけた表情がベテラン芸人のよう。現在の6代目は、目がパッチリしている。「永遠の7歳」(大津山さん)らしく活動的な様子だ。若返っているように見えるのはナッツの美容効果? まさかなぁ。【水津聡子】

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