クマが閉じこもり、入り口がビニールシートで覆われた民家(左奥)=秋田県湯沢市で2025年10月23日、工藤哲撮影

 秋田県湯沢市や横手市の中心市街地にクマが相次いで出没し、住民に不安が広がっている。湯沢市では4人が負傷して20日から民家に立てこもった状態で、横手市でも川の近くにすみ着いていたとみられることから22日に市の判断で「緊急銃猟」を実施した。今後も再び市街地に出没する可能性があり、自治体は朝や夕、夜間の外での散歩を控えることなどを呼びかけている。

 秋田県警湯沢署によると、20日午前5時~6時20分ごろにかけて、JR奥羽線湯沢駅付近の路上やホテル駐車場、民家の4カ所で50~70代の男性4人がそれぞれ相次いでクマに襲われ、背中や腕、足などを負傷した。被害者は犬の散歩やホテル駐車場を巡回している途中だったという。同一のクマかは断定できないが、一番最後に民家で男性が襲われた際、男性がクマを家に閉じ込め、そのクマは民家にとどまっている。湯沢市などは入り口にわなを設置し、捕獲を待っている状態で、23日で4日目となった。

 現場周辺は飲食店などが建ち並ぶ住宅密集地で、クマが立てこもる民家では入り口付近がビニールシートで覆われ、近くでパトカーが待機している。近隣の店では「クマ出没中のため自動ドアの電源オフにしております」と書かれた紙が貼られていた。女性店員は「この辺でクマが出たことはこれまでなかった。来客が減ってしまった」と話した。

クマが侵入したことを受け、「熊出没 注意」と張り紙された自動ドア=秋田県湯沢市の湯沢雄勝広域市町村圏組合消防本部の入り口で2025年10月23日、工藤哲撮影

 一方、同日午前4時過ぎ、現場から約500メートル北に位置する消防本部入り口の防犯カメラには、自動ドアを開けて建物に入り込むクマ1頭が映っていた。同本部の高橋敦志総務課長によると、入り口の自動ドアは二つあり、一つ目のドアを開けたが二つ目は施錠されていたため、中には入らず出ていった。高橋課長は「ガラスのドアを3カ所ほどひっかき、傷がついてしまった。周囲には血痕があり、爪のようなものが落ちていた。この建物は2020年に完成したばかりだが、敷地にクマが入ったのは初めて。ドアの修理代には高額な費用がかかるかもしれない」と話す。

 地元住民の間には不安が広がっている。40代の女性は「学校は保護者が送迎し、またいつ現れるかと思うと怖い。夕方は歩く人が明らかに減った。気軽に外出できなくなり、この先いつまで続くのだろうか」と案じる。湯沢市は25、26両日に予定していた屋外イベントの中止を決めた。

 一方で横手市は、横手川河川敷にクマ3頭が出没し、茂みに隠れて動かないことからすみ着いた可能性があるとして、22日に「緊急銃猟」を実施した。周囲の安全を確保したうえで十数発を発砲し、3頭に命中。23日に3頭の駆除が確認された。

 横手市は「朝や夕の散歩に加え、物置や家の戸締まりや食べ物になりそうな生ごみを放置しないことや、柿の実は速やかに収穫することなどを改めて確認してほしい」と呼びかけている。

 また仙北市も23日に同市角館町内で緊急銃猟を実施し、クマ2頭を駆除したと発表した。【工藤哲】

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