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<児童心理学の専門家によれば、ポイントは「子供の感情に配慮したアプローチ」にあるようだ──>

正しい言葉をかけるのは簡単ではない。特に子育ての場面ではなおさら難しくなる。

だが、臨床心理士で、子育てと教育の戦略アドバイザーとして10年以上の経験を持つサラ・レボヴィッツ・スリア(Sarah Lebovitz Suria)氏は、親が避けるべき言い回しと、代わりに使うべき表現を紹介している。


サラ・レボヴィッツ・スリア(Sarah Lebovitz Suria, PhD, ABSNP)

米ペンシルベニア州で活動する臨床心理士。フォーダム大学で学校心理学の博士号を取得し、ニューヨークの個人診療所で神経心理学的検査や家族に向けたアドバイス・支援を行ってきた。



親が「避けるべき」フレーズ

避けたい言葉①:「大丈夫だよ」
代わりに使いたい言葉:「不安なんだね」

つい子供の不安をすぐに打ち消したくなるが、「大丈夫だよ(You're fine)」という言葉は、子供の助けにならないことがあると、スリア氏は本誌に語る。

「親が『大丈夫』『平気だよ』と言っても、子供自身はそう感じていないかもしれない。だから、『不安なんだね、深呼吸しようか』などと言ってみてほしい。膝をすりむいたときには、『大丈夫』と言う代わりに、『洗ってから、あとでまた様子を見よう』と伝える方がいい」

こうした声かけは、子供が気持ちを理解してもらえたと感じるだけでなく、感情に対処するための「次の一歩」にもなる。

「『大丈夫』『平気だよ』と言うだけでは、具体的な行動につながらない」とスリア氏は指摘する。「その言葉を受け取った子供は、ただそのまま気持ちを抱え込むことになる」

避けたい言葉②:「頭がいいね」
代わりに使いたい言葉:「頑張って取り組んだね」

子供を褒めるのは自然な行為だが、どんな褒め方をするかが、子供が自分自身をどう捉えるかに影響を与えるとスリア氏は指摘する。

「『頭がいいね』という言葉は、その子の『固定された特性』に焦点を当ててしまう」とスリア氏は言う。「その代わりに、『すごく頑張っていたね』『一生懸命取り組んでいたね』『新しいやり方がうまくいったね』など、努力や工夫に注目した言葉をかけてほしい」

こうした言葉は、子供の「強みに基づいた視点」を育むものであり、自分の努力によってスキルを伸ばし、前向きな特性を育てられると実感させる手助けになる。

避けたい言葉③:「ダメ」
代わりに使いたい言葉:「今はできないけれど、週末に計画しよう」

もちろん、「ダメ(No)」と言わなければならない場面はある。ただし、子供とのコミュニケーションをより建設的にするためには、言い換えを意識するとよいとスリア氏は提案している。

「私のお気に入りの言い方は、ただ『ダメ』と言うのではなく、『今はできないけど、週末に計画しよう』のように伝えること」とスリア氏は話す。これは単に「境界線を引く」ことではなく、親子の間に必要なやり取りのためのコミュニケーションでもある。

「境界線を引くというのは、『今はできない』ということを明確にすること。ただ、それを親と子どもの対立構造にせず、『今回は難しいけれど、また別のときに考えよう』という方向に持っていくことが大切」とスリア氏は語る。

こうした、感情に配慮した対話的なアプローチは、近年広まりを見せる「ジェントル・ペアレンティング(Gentle Parenting)」の考え方と一致している。この子育てスタイルは、厳しいしつけよりも共感、落ち着いた対応、愛情を重視する姿勢が特徴だ。

2024年に学術誌『PLOS ONE』で発表された調査では、幼い子供を持つ親の約半数が自らをジェントル・ペアレントと認識していることがわかった。

アン・ペザラ(Anne Pezalla)氏とアリス・デヴィッドソン(Alice Davidson)氏による研究によれば、ジェントル・ペアレンティングが広まった背景には、新型コロナウイルスによるパンデミックのストレスや、多くの親世代が受けてきた子育てへの反発があるという。

研究では、ジェントル・ペアレントたちはしばしば「自分の親とは逆のことをしよう」と意識しており、境界線は設けつつも、罰を与えることは避ける傾向があるとされている。

満足感を感じている親は多い一方で、3分の1以上が「自信のなさ」や「燃え尽き感」を抱えていると答えており、常に冷静でいることの難しさと、その一方でのやりがいの大きさが浮き彫りになっている。

避けたい言葉④:「全然聞いてないじゃない」
代わりに使いたい言葉:「ちょっと聞いてほしいな」

たとえば寝る準備をしようとしているのに、子供が夢中で遊び続けている――そんな場面でも、対立的な言葉ではなく、子供の視点に立った呼びかけが効果的だとスリア氏は話す。

「『このゲームにすごく集中してるね』『今ちょっと忙しそうだね』といった声かけをした上で、『お風呂に入る時間の5分前に声をかけようか?』『5秒だけこっちに集中してくれる?』などと伝えてみるといい」とスリア氏は提案する。

こうした言い回しによって、子供との関係性を壊さずに前向きなやり取りができる。大げさな否定ではなく、子供が理解しやすい形でコミュニケーションを築くことができるからだ。

「『全然聞いてない』のような大げさな言い方をする代わりに、視点を切り替えることが大切」とスリア氏は語る。「極端な言い方は、子供の自己認識に悪影響を与える可能性がある。そうした言葉が『自分はそういう人間だ』という印象を植えつけてしまうから」

子供への声かけについて、スリア氏は「毎回正しい言葉を選ぶことが目的ではない」と強調する。大切なのは、自分と子供にとってしっくりくるやり方を試し、見つけていくことだという。

「紹介したフレーズはあくまで『方向性』として使ってほしい」とスリア氏は話す。「使ってみてうまくいかなければ、別の方法を試せばいい。大切なのは、その背後にある考え方を理解して、自分なりに応用していくこと」

「誰かの話を聞いたり、記事を読んだり、テンプレート通りに練習するのもいいが、最終的には自分の言葉に落とし込んで、何がうまくいくか・いかないかを見極めていくことが必要」と締めくくった。


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