飼育環境の改善で飼い犬の長寿命化が進む中、人間の認知症にも似た犬の症状に関心が高まっている。
発症すると、お漏らしや徘徊(はいかい)などの行動を起こすことがあるが、専門家は「いくつかの方法で予防したり進行を遅らせたりすることはできる」として早期発見の重要性を指摘する。
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犬の問題行動に詳しい東京農工大動物医療センターの入交(いりまじり)真巳獣医師(58)によると、人間のアルツハイマー型認知症に似た犬の病態は、「高齢性認知機能障害」「認知機能低下症候群」などと呼ばれる。
主な症状は、飼い主を忘れる▽おびえる▽攻撃的になる▽Uターンや後退ができなくなる▽夜中にほえ続ける――だ。
進行するにつれ症状が増え、ひどい場合には、その場でクルクル回り続けたり、意味もなく歩き続けたりする。
対策は「人間と同じ」
予防や症状緩和のために、家庭で対策できることはあるのか。
入交獣医師は「人間と同じで、運動と脳トレ、食事に気を配ってほしい」と話す。
「運動」は散歩に限らず、お座りと起立を繰り返したり、柔らかいクッションの上を歩いたりすることも有効。ただし無理な運動は禁物という。
「脳トレ」は、例えば、転がすことでおやつが出てくる「知育トイ」などを活用する。市販品を買わなくても、空き箱など家にあるもので代用できる。
また、高齢になっても新しく芸を覚えることなどができるため、人間と楽しくコミュニケーションをとることが良薬になる。
「食事」は、総合栄養食であるドッグフードがおすすめ。遺伝子栄養学の知識がないまま手作りするより、年齢に応じて必要な成分が計算されているフードの方が安全性が高い。
10歳を超えるとリスク急増
入交獣医師によると、犬の認知症は昔からある症状だ。だが、ペットフードや医療の発達、室内飼いの増加により長寿化した結果、認知症症状に気づくケースが増えている可能性はあるという。
英科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」の研究報告によると、犬の認知機能障害の有病率は、11~12歳で28%、15~16歳で68%とされる。
10歳を超えると発症リスクが急激に高まり、1年ごとに認知症になる確率が約68%高くなると言われている。
ただ、飼育環境の見直しや、サプリメント・医薬品によって症状が改善することもあり、入交獣医師は「総じて大事なのは異変に早く気づいてあげることだ」と話している。【伊藤遥】
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