台湾有事を巡る高市早苗首相の国会答弁に中国政府が反発を強め、日本への渡航を自粛するよう呼びかけている。多くの中国人旅行客を受け入れてきた大阪では既に予約キャンセルも出ており、「長引けば影響が出る」といった声が上がる。
「こんなことは初めてです……」。中国籍の40代男性は17日朝から、予約キャンセルの連絡を2件受けた。3年前から大阪市の繁華街・難波で経営してきた民泊の予約だ。
キャンセルの連絡はいずれも中国人客からで「渡航を控えるよう国から指示があった」という内容だった。男性は「国同士のことは個人の意思ではどうにもできないが、中国と日本は密接な関係。長期化すればさまざまなところで影響が出てくる」とため息をつく。
大阪観光局によると、大阪は2025年1~9月で、中国から約426万人の観光客を受け入れた。24年の同じ時期と比べると、1・5倍に上っている。
大阪や神戸の繁華街で焼き肉店やすし店を22店舗経営する「あじびるグループ」の本岡玲二代表(58)は渡航自粛について「このタイミングで、今回の騒動か」と肩を落とした。10月に閉幕した大阪・関西万博後の景気落ち込みに気をもんでいたからだ。
本岡さんによると、毎年1~2月にやってくる中国の春節(旧正月)では11~12月ごろから予約が入り始める。2月は飲食店にとって閑散期に当たり、インバウンド(訪日客)の存在は貴重という。本岡さんは「政治的な感情は抜きにして、消費が冷え込む阻害要因は困るというのが本音だ」と話した。
「影響が出てくれば、当然対応しなければならない」。大阪のバス会社で取締役を務める男性(66)の口調は厳しい。
自らが関わる会社について「今はまだ中国に関係する契約は取り消されていないが、今後は分からない」と話す。男性は別のバス会社でも相談役を務めており、近くある幹部会議でも渡航自粛が議題に上る見込みだ。「インバウンドの契約は多いので、キャンセルが出るなら経営にはこたえるだろう」と危機感をあらわにした。【岡崎英遠、藤河匠】
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