南海電鉄は、4月に合併した泉北高速鉄道の泉北線(中百舌鳥―和泉中央、14・3キロ)の運賃収入について、値下げの影響に伴う2025年度の減少額を当初想定の10億円から8億円に圧縮するとの見込みを明らかにした。値下げや大阪・関西万博開催の効果などもあって泉北線内と難波や新今宮、天下茶屋駅間の定期利用者が前年比で25%程度の増加と想定を上回った。南海は「割安感が高まった」と分析している。
南海と泉北高速は、相互直通運転を行っているものの、合併前は両社の初乗り運賃を支払う必要があった。合併で運賃は乗車距離に応じて算出され、泉北線と南海各線の相互区間は平均7%、通勤定期23・5%、通学定期38・8%の値下げになった。
例えば、6カ月の通勤定期の泉北線泉ケ丘―難波間は従来の12万9500円から10万1360円に減額。6カ月の通学定期の和泉中央―難波間は従来の6万2430円から3万5860円と43%も値下げされた。
南海はラッピング車両やポスター掲示、沿線の学校訪問などを通して値下げをPRしてきた。物価の上昇が続いて鉄道各社も相次いで運賃を引き上げる中、好意的に受け止められている。従来は、泉北線沿線から中百舌鳥駅で大阪メトロに乗り換えて大阪市中心部に向かっていた利用者が、値下げで南海に切り替えたケースがあるという。
泉ケ丘駅近くの帝塚山学院大の荻野寿久・学生課長は「通学定期代の負担が減り、受験生に選択肢として考えてもらう材料の一つになる」と歓迎する。同深井駅から徒歩3分に10月上旬、分譲マンション「デュオヒルズ水賀池公園ヴェリテ」(323室)が着工し、年末に販売を開始する。担当者は「物価高なので、生活費減へのお客様の感度は高い。運賃値下げはマンションをアピールする大きなポイントになる」と語る。
沿線自治体の期待も大きい。堺市の永藤英機市長は記者会見で「連携を密にしながら活性化を進めたい」と述べた。和泉市の辻宏康市長は取材に「学生が泉北線を使って通学する選択肢が広がる。転入人口の増加を期待する」と感謝した。
泉ケ丘駅から徒歩6分に11月、近畿大が「おおさかメディカルキャンパス」を開設した。大阪狭山市から医学部や大学病院が移転し、患者や医療従事者、学生ら来訪者は年間約100万人と見込む。南海は泉北線の当初の減収想定に近大移転の影響を織り込んでおらず、減収額のさらなる圧縮につながる可能性がある。
南海は泉北線について「利用しやすい運賃設定を通じ、沿線の『暮らす・働く・訪れる』価値を高めることを目指す」と説明する。
泉北高速鉄道は1971年に第三セクターとして中百舌鳥―泉ケ丘駅間で開業し、95年に和泉中央駅まで延伸した。南海が2014年に株式を取得し、25年に合併していた。【中村宰和】
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。