写真はイメージです ANNA GRANT/Shutterstock

<二分脊椎という先天性の疾患を持つ2歳の息子を育てる母親が公開した動画が大きな話題に。映像に驚く人がいることは理解しつつ、母親が伝えたかったこととは?>

米マイアミ在住で2人の子供を育てる母親であるハンナ・マイラムという女性が、ショッキングな映像をSNSにアップして話題になっている。脊椎の疾患で下半身に麻痺のある2歳の息子セイラーが、自分の足の指を噛みちぎろうとしていた瞬間が写った見守りカメラの映像で、この子供の姿を夫に伝えるために撮影されたものだった。

■【動画】先天性の病気を持つ子の「日常」を知って...自分の指を「噛み切りそうになる息子」の 映像を母が公開

ハンナは自宅の玄関に設置されている防犯用の見守りカメラに、息子の姿を映して夫のランデンに息子の様子を見せようとしていた。彼女は後に、この映像を自身のTikTokアカウント(@hannmilam)に投稿。そこには次のように書かれていた。

「2歳の息子は麻痺によって腰から下の感覚がない。(この映像は)車に乗っている時に何度も自分の足の指を噛みちぎろうとしたことを、カメラ映像を通して夫に伝えようとしているところ」

夫のランデンは軍務に就いており、この出来事が起きたときには不在だった。動画はたちまちSNSで拡散されたが、ハンナにとっては家族の「ユニークな日常」の一幕にすぎないという。「セイラーは妊娠20週の時の胎児超音波検査で、二分脊椎であることがわかった。翌月には、胎児手術を受ける決断をした」と、ハンナは本誌に語った。

二分脊椎とはどのような病気なのか?

二分脊椎は神経管閉鎖障害の一種で、脊椎に異常が生じる先天性の疾患。米国疾病予防管理センター(CDC)によれば、米国内で生まれる2875人に1人の割合で発症するとされる。この疾患は、子宮内で胎児の脊椎の神経管が正常に形成・閉鎖されないことで起こり、脊椎のさまざまな部位に発生する可能性がある。

神経管が完全に閉じなかった場合、脊髄を保護する骨も正常に形成されず、結果として脊髄や神経に損傷が生じる可能性がある。

胎児の脚の神経のさらなる損傷を防ぐ目的で、胎児手術を選択する親も多い。ただしセイラーの場合は事情が異なっていた。「セイラーの脚の神経はすでに完全に損傷していた」とハンナは言う。「手術の目的はキアリ奇形を改善し、水頭症の予防を目指すものだった」

キアリ奇形は、脳の下部が頭蓋骨の出口を超えて脊柱管という空間に入り込む状態で、運動障害などを引き起こすことがある。水頭症は脳内に脳脊髄液が過剰にたまり、脳が圧迫されることでダメージを受ける疾患で、吐き気や視力障害、頭痛、歩行困難などの症状が現れる。

マイラム一家はテキサス州の医療機関で手術を受け、「セイラーのキアリ奇形は最終的に改善した」という。「生後数カ月で水頭症を発症したが、現在はうまく管理できている」

ハンナは、時には大変なこともあると語るが、セイラーの車椅子での日常の移動は家族にとって完全に「普通のこと」になっているという。「それがセイラーの一部であり、私たち家族の日々の過ごし方だ。すっかり慣れているから、困難だとは思わなくなった」

動画を公開することで母親が伝えたいこと

とはいえ彼女は、今回TikTokに投稿した「血だらけの足指」などの動画が、多くの人にとって衝撃的に見えることは理解している。「外から見たら、圧倒されたり大変に思えるようなことかもしれない。でも私たちにとっては、これが『うちの普通』。自分の子供のことになると、人は自然と受け入れられるようになる。すごいと思う。」

実際、セイラーが自分の足の指を噛んでしまったのはこれが初めてではなかった。「新しい歯が生えてくると、足を噛む癖がある」とハンナは話す。以前は保護用のバンテージを使っていたが、「最近は歯が生えていなかったから使っていなかった」という。

だがその日の朝はセイラーに新しい奥歯が生え始めていたため、またその癖を繰り返してしまったようだ。ハンナは「完全に油断してた」と話し、「私は子供2人を車に乗せて、1時間ほど運転して帰宅したところだった。セイラーは車の中でしか(足の指を噛むことを)しない。私たちに見られてないと分かっているから」

ハンナがこうした動画を投稿するのは、「同じような苦労をしている他のお母さんたちがいることを知っているから」だ。

実際、動画には彼女に共感するコメントも寄せられた。「うちの二分脊椎の娘も同じことをやっていたが、そのうちやらなくなった」「うちの息子も二分脊椎だが、歯が生えてきた妹が彼の足を噛みまくっていた」といったものだ。

ハンナはこうした動画を投稿することによって、同じ立場の親たちが日常的に直面する現実を、もっとオープンにできればいいと考えている。「たとえ困難があっても、障害によって親や子供の可能性が制限されるべきではない」と彼女は語る。「こうしたことを、もっと率直に話せるようにしていく必要がある」

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