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<デザイン設計の前提の限界と問題点が新たな研究で明らかに...>
女性用ランニングシューズは、単に男性用モデルを小さくして色を変えるだけで済ませてはならない──英医学誌『BMJ Open Sport & Exercise Medicine』に新たな研究結果が掲載された。
本研究によれば、現在市販されているランニングシューズの多くは、解剖学的・生体力学的にも女性の特性やライフステージの変化を反映できていないとして、研究チームは次のように述べる。
「今回の調査で明らかになったのは、ランニングシューズの設計は、男性の身体構造やバイオメカニクス(生体力学)が前提となってきたという重大な問題です。(...)
女性の足に合う靴を開発するには、単にサイズを縮小して色を変えるというアプローチから脱却しなくてはなりません。(...)
女性特有の足の形態や社会構造、そして趣味嗜好に応じた、性差やジェンダーに配慮したデザインが必要です。これらはすべて、生涯を通じて変化していくものでもあります」
ランニングシューズの製造企業は、過去50年にわたって、けがの予防、快適性やパフォーマンス向上の強化を目的に何十億ドルもの資金を投じてきた。
しかし、研究チームによると、そのほとんどが男性アスリートを対象にしたものであり、女性用ランニングシューズの多くは「小さくしてピンクにする(shrink it and pink it)」という安直な手法に頼っており、女性向けのデザイン設計は後回しにされてきたという。
そもそもランニングシューズは、足の形をもとにした3Dの「ラスト(足型)」から設計される。
【参考文献】
Napier, C., Dhillon, G., Wilhelm, A.-C., & Ezzat, A. M. (2025). "If a shoe had been designed from a woman's foot, would I be running without getting the injuries?": Running footwear needs and preferences of recreational and competitive women runners across the lifespan. BMJ Open Sport & Exercise Medicine, 11.
しかし、多くのメーカーは、男性の足を基準にラスト(足型)を作っており、製品ライン全体で同じ型が使用されている。女性向けモデルをつくる際も、サイズと色を変える程度で、構造的な調整はほとんど行われていないのが実情だ。
こうしたデザイン設計が女性ランナーにどのような影響を与えているのかを検証するため、カナダのバンクーバーのランニング専門店で年齢やラン歴などの経験、トレーニング量が異なる21人の女性を対象に研究チームは調査を実施した。
被験者は、週に平均19マイル(約30キロ)を走る「レクリエーションランナー(趣味で走る人)」11人と、平均28マイル(約45キロ)を走る「競技ランナー」10人。年齢は20歳から70歳まで、ラン歴は6年から58年に及んだ。21人のうち9人は妊娠中、または出産直後にもランニングを継続していた。
被験者にとって最も重要なシューズ選びの基準は「快適性」であり、次いで「けがの予防」「パフォーマンス」の順であった。
快適性に関しては、多くの被験者が「つま先部分を広く」「かかとは狭く」「クッション性を高めてほしい」と回答。
競技ランナーは、カーボンプレートなどの高機能素材を評価しながらも、「快適さが損なわれては意味がない」と評価を付け加えた。また、けがの予防を最優先に考え、信頼できる販売員や専門知識を持つスタッフのアドバイスを重視する傾向が見られた。
用途に応じて「トレーニング用」「レース用」「けがからの回復期用」など、目的別にシューズを使い分けたいというニーズも顕在化した。
また、出産経験のある女性は「妊娠中や出産後には、幅が広めのシューズと高いサポート性が必要」と答え、高齢の競技ランナーは「年齢とともにクッション性やサポート力がより重要になる」と指摘している。
今回の調査が、地域的に限定された小規模なサンプル数である点を認めつつも、「シューズ設計における、より包括的で順応性の高いシューズ設計の必要性を明確に示す結果だった」と研究チームは結論づけている。
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