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<「日常の揺らぎ」が片頭痛を招く要因に? ハーバード大学の最新研究より>
食事、ストレス、睡眠、天気......これまで片頭痛の引き金とされてきた要因に加え、日常生活の「安定性」も重要な役割を果たす可能性がある──
ハーバード大学とマサチューセッツ総合病院の研究チームは、日々の出来事の「意外性」を数値化した「サプライザル・スコア(surprisal score)」を用いて、片頭痛の発症リスクとの関連を調査した。
その結果、予測不能な出来事が多いほど、12時間以内あるいは24時間以内に片頭痛が起こる確率が高くなることが明らかになった。
被験者は主に女性を中心とする109人。論文によれば、サプライザル・スコアが高いと片頭痛リスクが有意に上昇することが統計的に確認された。
ノースウェル・ヘルス頭痛センター所長のノア・ローゼン医師は、片頭痛とはストレスに対する過敏反応としての性質が強いとして、次のように語る。
「片頭痛を引き起こす原因には、月経や閉経などのホルモン変化のような内因性のものもあれば、脱水症状や天候の変化のような外因性のものもあります。多くの場合、片頭痛はホメオスターシス(生体恒常性)が乱れたときに起こる反応です。(...)
つまり、食事、水分、睡眠、ストレスといった体内のバランスを保つ仕組みに何らかの変化が生じると、その警報として片頭痛が発生します。今回の研究結果は、この見解を裏づけるものです」
サプライザル(驚異度)という新しい概念について、ローゼン医師は次のように説明する。
「それは『日常から外れた出来事』を意味しています。たとえば、心的外傷後ストレス障害(PTSD)や急性ストレス障害は、非日常的な出来事を経験したことで発症します。
片頭痛も、そこまで極端でなくとも、通常の行動パターンが乱されるような予想外の出来事に反応していると思われます」
研究チームは、こうした日々の予測不能性を数値化するサプライザル・スコアを「短期的な片頭痛リスクを評価できる、動的かつ個別化された指標」としての有用性を裏付けるとともに、「不確実性と[特定の状況で認知、行動、意思決定などが影響を受ける]状況依存性を考慮した手法」として提案する。
この新たな手法を予測分析ツールに導入すれば、頭痛リスクをより効果的かつ個別に管理できる可能性がある。
「私たちの体は常にホメオスターシス(生体恒常性)を保とうとしています。食事、睡眠、水分摂取のいずれかが崩れると、その警告として片頭痛が発生するケースがあります(...)
原因を特定できる人は片頭痛患者のうち約70%です。残りの約30%は、そもそも原因の有無にすら気づかないケースもあります。だからこそ、日々の行動パターンに注意を払うことが発症メカニズムの理解につながることになるのです」(ローゼン医師)
こうした「いつもと違うこと」には、良い知らせや悪いニュース、喧嘩、仕事や学校でのルーティンの変化など、日常生活におけるあらゆる出来事が含まれる。
「こうした変化は必ずしも避けられるとは限りません。重要なのは柔軟性を持ち、注意深く、自分の内面と向き合うことです。それが片頭痛の予防や対処につながる可能性があります」とローゼン医師は述べる。
「アメリカ片頭痛財団」によるとアメリカでは、推定3900万人が片頭痛に苦しんでいるとされる。
【参考文献】
Turner, D. P., Patel, T., Caplis, E., & Houle, T. T. (2025). Information-theoretic trigger surprisal and future headache activity. JAMA Network Open, 8(11), e2542944.
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