信夫山(福島県福島市)を愛猫家の聖地として盛り上げようと、毎月22日に「ねこ稲荷」の愛称で親しまれている西坂稲荷神社隣の古民家で開かれてきた「信夫山ねこまつり」が22日、最終回を迎えた。2024年の「猫の日」(2月22日)からNPO法人が開催してきたが、運営体制が継続できなくなり、22回目となったこの日を区切りとした。「信夫山の新たな観光資源に定着していたのであまりにも残念」と市民有志が存続を模索している。
「ねこ稲荷」にはこんな伝説がある。かつて御山(おやま)(信夫山)にすみ着いていたキツネが、和尚に化けては魚を盗む悪さをしていたが、しっぽがちぎれて化けられなくなってしまった。被害者のはずの和尚に諭されて恩義を感じ、御山の人々のために蚕の守り神となって猫のようにネズミを退治した――という。
福島市の街づくりに取り組むNPO法人「ストリートふくしま」が、この伝説と、西坂稲荷が愛猫家から人気を集めていたことに着目。隣の築180年の古民家をリノベーションして22年4月に休憩所「古民家西坂家」をオープンし、愛猫の写真を掲示できるボードを設置して盛り上げた。24年2月からは「ねこまつり」を毎月開催。猫にちなんだ軽食やグッズを販売し、保護猫の譲渡会など情報交換の場にもなった。
このほどストリートふくしまが事業整理を決め、ねこまつりの運営を一手に担っていた山尾良平理事長(66)も退任することになった。山尾さんは「県外から休みを取ってわざわざ来る人もいるなど、信夫山のにぎわい創出につながっていた。続ける道を見つけたい」と話す。
最終回となった22日は猫の形の食パンや「カレーニャイス」「ねこまんまピザ」を販売。収穫したばかりの信夫山名産ユズも人気を集め、好天にも恵まれて224人が訪れた。「皆勤賞」という絵画教室主宰の橋口久子さん(70)は「猫好きが集まる温かい空間だった。ぜひ続けてほしい」と熱望していた。
猫たちが羽黒神社の大わらじをかついで踊る、ねこまつりの愛らしい看板を描いたイラストレーターのico.(いこ)さん(40)は「今日のにぎわいを見て、楽しみに山を登る人が増えたことが分かったし、保護猫について考えるきっかけにもなっていた意義のあるイベント。私も関わり続けたい」。信夫山の研究を続け、山尾さんに「ねこ稲荷」の伝説を教えた浦部博さん(89)は「山尾さんのおかげで観光資源としてようやく軌道に乗っていたので残念。継続が何より大事なので、ぜひ持続可能な形で続けていければ」と話していた。【錦織祐一】
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。