(写真はイメージです) Umanoide-Unsplash
<「がん患者」の歯のCT画像に映った、全身の健康を損なう「空洞」。その正体とは?──>
乳がん患者の口腔X線画像を映した動画がTikTokで拡散し、再生回数は500万回近くに達している。
【動画】がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...歯科医が警告する「がんと歯」の意外な関係
動画を投稿したのは、ユタ州を拠点とする歯科医で、ホリスティック・ヘルス(※)の認定専門家でもあるミシェル・ジョーゲンセン医師(@livingwellwithdrmichelle)。彼女は乳がんを患っているメリッサ・ジェイコブセンの歯のスキャン画像を共有した。
(※)人の健康を体だけでなく、心・精神・生活環境などを含めて総合的にとらえる考え方
ミシェル・ジョーゲンセン医師(Dr. Michelle Jorgensen)
ユタ州を拠点とする歯科医師。ホリスティック・ヘルスの認定専門家で、著書に『Living Well with Dr. Michelle』など。
ジョーゲンセンは、過去に根管治療を受けた歯が2本、内部で細菌感染を起こしていたため抜歯した、と説明し、本誌に次のように語った。
「感染した歯ががんを引き起こすわけではありませんが、体ががんと闘う力を著しく弱めてしまう可能性があります」
「悲しいのは、多くの人が口腔内の感染と全身の健康との関係に気づかないことです。口は体と切り離された存在ではなく、むしろ『入り口』なのです。そこを整えることで、全身の健康状態が回復に向かうケースは少なくありません」
中国・四川大学の研究チームも、口腔の状態は全身の健康状態を映し出す重要な手がかりとなり、口のトラブルは多くの慢性疾患と深く関係していると指摘する。
がんの診断と見過ごされていた「感染」
ジェイコブセン(43歳)は、6人の子供を育てる専業主婦。本誌の取材に対し、乳がんの中でも最も一般的な「浸潤性乳管がん(IDC)」と診断されたことを明かした。アメリカがん協会によれば、乳がんの約8割がこのタイプに分類されるという。
血液検査でジェイコブセンの体内に細菌感染の兆候が見つかったことをきっかけに、担当の自然療法医は歯科での精密検査を勧めた。その後の高度な画像診断により、根管治療を受けた2本の歯が膿瘍(のうよう)を起こしており、歯の根の下には「黒く大きな空洞」が確認されたという。
問題の歯は10月13日に抜歯された。処置後、口腔外科医は「画像で見えていた以上に感染が広がっていたので、抜いて正解だった」とジェイコブセンに伝えたという。
ジェイコブセン自身もこう語っている。「歯を抜いてから、体調が明らかに良くなりました。本当に、体が『やっと取り除いてくれた』と喜んでいるようです」
口腔感染が免疫系に与える影響
ジェイコブセンは、診断を受ける前から根管治療済みの歯の下あたりに、ときどき「ふくらんだような」「ぶよぶよとした感触」を感じることがあったと話している。ただ、痛みがなかったため、夜間の歯ぎしりや食いしばりによる炎症だと思い込んでいたという。
ジョーゲンセンはこう指摘する。
「ほとんどの人は、口の中に細菌感染が起きているなんて気づきません。根管治療をすると歯の神経が取り除かれるので、何か異常があっても痛みが出ないんです。見た目には正常に見える歯でも、その内部では細菌や毒素が潜んでいて、静かに血流へ漏れ出していることがあります」
本誌は、イギリスで30年以上歯科医として経験を積んできたリチャード・ミラー=ホワイトにも取材を行った。同氏は、がん患者は細菌、ウイルス、真菌(カビ)などによる感染症に対して特に脆弱であると説明している。
「がんが進行するほど、また治療が強度を増すほど、感染症のリスクは高まります。口腔内の感染が免疫系を『シャットダウン』させることは通常ありませんが、免疫の働きを弱めることはあります」
「たとえば慢性的な歯の膿瘍や歯周感染があると、免疫系は常にその対応に追われる状態になります。その結果、免疫力が徐々に低下し、他の病気への抵抗力も弱まる可能性があります」
さらにミラー=ホワイトは、口腔内の炎症が体の他の部位の炎症を引き起こすこともあると指摘。歯周病をきっかけに、細菌や炎症性の化学物質が血流に入り込むことで、全身に悪影響を及ぼす恐れもあるという。
ミラー=ホワイトは、感染症のリスクを下げ、免疫機能を保つためには、バランスの取れた食事、適切な口腔ケア、十分な睡眠、そして定期的な歯科受診が不可欠だと強調している。
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