観光客らの食べ歩きのごみに悩まされている京都・嵐山で、「食べられるスプーン」の導入が始まった。京都市や地元商店街がアイデアを出し合い、試験的に3店舗で提供する。捨てられて困るなら、いっそのこと、食べてもらおうという発想だ。

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抹茶味のソフトクリームを「食べられるスプーン」で提供=2025年11月4日午後5時40分、京都市右京区、日比野容子撮影

 渡月橋の北を走る目抜き通り「長辻通」の両側には、食べ物や飲み物をテイクアウトできる店が軒を連ねる。その一つ、抹茶を使ったスイーツが人気の店「茶和々」では、11月から「極み抹茶ソフト」など二つの商品につけるスプーンを「食べられるスプーン」に変えた。

5種類のフレーバー

 スプーンは愛知県刈谷市の会社が製造する。パクッと食べられることから名前は「パクーン」。材料は小麦粉、砂糖、卵、国産野菜のパウダー。カボチャやおからなど5種のフレーバーがある。

 店のスタッフの谷岡瑞希さんによると、「これ、食べられるんや」「スプーンにも味がついていて、ちょっと得した気分」と客の反応も上々だ。運営会社「寺子屋」営業部の吉本有佑さんは、店の前に捨てられるごみが減ったと感じているという。

 嵐山では昨年から、京都市と地元商店街によるワークショップ「嵐山ごみ課題サミット」を定期的に開き、対策を話し合う。このなかで、食べられる食器のアイデアが生まれた。

 この夏、複数回にわたって「試食会」を実施。市まち美化推進課が調達したスプーンやストロー、皿などの「食器」を食べ比べた。かたすぎたり、商品の味と合わなかったりしたほか、みたらし団子用の皿は食べるだけでおなかがふくれた。

 検討の結果、スプーンで試行することになり、「茶和々」を含めソフトクリームを売る3店舗で取り組む。購入費用の2分の1を市が助成し、残りを嵐山商店街が負担する。

導入店を増やしたいが…

 本格導入に向けた最大の課題は費用負担だ。店の負担が発生し商品価格に転嫁するとなると、導入は難しいと二の足を踏むだろう。これまで茶和々で使っていたバイオマススプーンは1本1円ほどだが、市によると「パクーン」は1本あたり76円するという。

 嵐山商店街の石川恵介会長は「ごみを減らそうと取り組む店が余分なコストを負担しなければならないのでは不公平。嵐山の店舗は食べられる食器でないと売れないといった仕組みに変えていけるか、京都市とともに良い案を考えていきたい」と話す。

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