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<姿勢悪化が若年層でも深刻化しているが、「テックネック」は予防できる>
スマートフォン、ノートパソコン、ゲーム機は今や10代の生活に欠かせない存在になっている。しかし、その代償は見えにくいと、健康の専門家たちは警鐘を鳴らす。
猫背から背中の痛みなど、いわゆる「テックネック(Tech Neck)」に悩まされる若者が増えている。しかも、その長期的な影響は軽視できない。
なぜ首や姿勢の問題が10代で深刻化しているのか? 長時間のスクリーン視聴やゲーム習慣がどう影響しているのか? そして、その長期的なダメージをどう予防できるか?
デジタル機器に触れる年齢が年々早まり、そのリスクは高まっている。そのため緊急に対応することが求められている。首や姿勢の問題に関して、2人の専門家に聞いた。
姿勢と首への影響
「テックネック(Tech Neck)とは、長時間にわたる姿勢の悪さによって、首や背中の上部に痛みやこわばりが生じる症状を指します」と話すのは、理学療法士の資格も持つ、整形外科専門医のケイト・ライト医師だ。
「具体的には、首が過度に前傾し(いわゆる「ストレートネック」)、巻き肩になり、背中の上部(胸椎/きょうつい)が丸まってしまう姿勢が原因です。視線より下にあるパソコンやノートパソコンを長時間見続けたり、デスクワークやゲームで休憩することなく座り続けることが、大きな要因となっています」
2024年のStatistaの調査によれば、12〜13歳で初めてスマートフォンを持つ子どもが30%にのぼり、9歳までに持つ子も5人に1人の割合になっている。その多くはゲームで使用しており、その影響も明らかになりつつある。
2023年の調査では、eスポーツプレイヤーの4割が慢性的な痛みに悩まされていると回答。最も多かった部位が首だった。3〜5時間以上連続でゲームをすることだけでなく、「ストレス回避」のためにゲームをすることも痛みの要因とされている。
同年の別の調査では、アメリカの15〜17歳の92%が家庭にデスクトップ、またはノートパソコンを所有しており、13〜14歳では86%だった。若年層ほど、背骨への影響は大きい。ライト医師は次のように述べる。
「スマホ、タブレット、ノートパソコンなどを長時間使い続けることで、首や上背部(胸椎や肩甲骨周辺)に痛みが出ることが多いのです。正しい姿勢を取ることが困難になり、頸椎(けいつい)の自然なカーブが逆方向になるケースもあります」
「カイロプラクティック促進財団(Foundation for Chiropractic Progress)」の会長であり、著書『調整された現実(Adjusted Reality)』の著者でもあるシェリー・マカリスター博士は次のように述べる。
「姿勢は見た目だけでなく、身体機能にも影響します。首の自然なカーブが失われたり反転したりすると、神経信号の伝達にも支障が出ます。その結果、体のバランスや運動機能、呼吸機能、睡眠の質、気分、ストレスレベル、集中力などにも影響が及んでしまいます」
長期的ダメージの予防法
ライト医師は、整形外科的および神経学的な長期リスクを回避するために、次のような対策を挙げる。
• スクリーンタイムを制限する • デバイス画面の高さを目線の高さに調整する • ノートパソコンを膝の上でなく、目線の高さに位置させるためのスタンドなどを活用する • 1時間に1回は立ち上がって歩いたり、ストレッチや姿勢を変える • 姿勢を意識したスタンディングデスクを使用する
自宅でできる4つのストレッチ
マカリスター博士は、「朗報」は、姿勢改善に特化したエクササイズが効果的であることは、すでに研究で実証されていることだと語る。
そして、ライト医師が自身のクリニック「フィジカル・セラピー・セントラル(Physical Therapy Central)」でも採用している、自宅でできるテックネック(Tech Neck)の予防と緩和ストレッチとして次を挙げる。
•チンタック(顎を引く) 背骨を上に引っ張られているように背筋を伸ばし、顎を引いて「二重あご」をつくるようにする。鼻先はまっすぐ前を向いたまま。5秒キープを20回繰り返す。
•頸部伸展ストレッチ
両手の指を首の後ろで組み、天井をゆっくり見上げる。無理のない範囲で最大20回まで繰り返す。
•胸椎伸展ストレッチ
背の低い椅子に座っている場合は、腕を上に伸ばして背中を反らす。背もたれが高い椅子に座っている場合には、肩甲骨の間に巻いたタオルや小さなボール、フォームローラーを挟み、腕を組んで後方に反らす。5秒キープを20回繰り返す。
•ドア枠ストレッチ(大胸筋)
肩の高さでドアの枠に両手を置き、一歩前に出ると肩の前部にストレッチ感が得られる。30秒キープを3〜5回繰り返す。
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