山尾美里さん=和歌山市で2025年11月10日午後1時54分、安西李姫撮影

 子育てに励むママやパパのSOSに寄り添いたい。山尾美里さん(32)は今年7月、一時預かり専門の「託児所くるくる」(和歌山市中)を開設した。「つわりがひどくて上の子と一緒に遊んであげられない」「気が付けば、美容室にずっと行けていなかった」。そんなママたちに、ホッと一息つける時間を提供している。

 原点は自身の育児経験だ。2022年夏に第一子となる娘を出産した。就職を機に和歌山へ移り住んだため、近くに頼れる親族はいない。夫も仕事が忙しくほとんど“ワンオペ育児”の状態だった。

 娘が10カ月になった頃、初めて熱を出した。まだ言葉を発しない娘が苦しむ様子を見ると不安が押し寄せた。泣きわめく娘を前に、自分も泣きたいぐらいだった。

 孤独を感じ落ち込んでいた時、マンション内の私設図書室で出会ったママ友がおやつを持って訪ねてきてくれた。10分ほどおしゃべりをしただけで、驚くほど優しい気持ちになれた。「ママにもケアが必要」と身をもって感じ、「保護者が笑顔になれる場所を作りたい」と考えている。

 元々中高の保健体育教諭で、子どもが大好き。漠然と子育て支援への関心もあったため、出産前に保育士資格を取っていた。23年7月からは週1回、通っていた私設図書室で親子交流会を開催。子どもたちを遊ばせながら、甘いものを食べてのんびりする。口コミで評判が広がり、1年半の間に500人弱の保護者と会うことができた。

 託児所のオープンに当たっても、その時に出会ったママ友たちが助けてくれた。フローリングの張り替えや家具の組み立てを手伝ってくれたり、使わなくなったおもちゃや絵本を寄付してくれたり。「地域のママみんなの思いが込められた施設です」

 子どもを預けた保護者が「リフレッシュできました」と笑顔で帰ってきてくれるのが喜びだ。「バイバイする時泣いていたけれど、大丈夫かな……」。そんな心配から、気が休まらない保護者も少なくない。随時写真付きの保育リポートを送信するなど、安心して預けてもらえる仕組み作りに努めている。

 ママも息抜きしていいことを知ってほしい。ママが笑顔になれば、子どもも笑顔になる。そんな良い循環が生まれることを願って『くるくる』と名付けた。

 「まだまだ先の未来ですが娘が子育てをする時、身近に頼れる場所があったらいいな。そんな思いも込めて、頑張っています」。託児所の様子はインスタグラム(@kurukuru_takujisyo_wakayama)から。【安西李姫】

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