立命館大朱雀キャンパスに掲げられている立命館憲章。本文4行目に「第2次世界大戦後、戦争の痛苦の体験」、15行目に「非暴力」の文言がある=京都市中京区で2025年11月12日午後4時22分、太田裕之撮影

 立命館大や付属の小中高校を運営する学校法人立命館が改正を進める「立命館憲章」を巡り、4月に学内で示された改正案で、第二次世界大戦への反省を示す文言などがなくなったことに学生や教職員から反対の声が上がった。法人は10月18日の創立記念行事で新たな憲章を公表する予定を変更し、文言を取り入れた修正案を同27日に学内に示した。12月10日まで改めて意見を募っている。

 憲章は教育・研究活動の根幹にある理念や精神を明文化し、共有する価値観や行動指針を示すため2006年に制定された。その後の社会情勢の変化を受け、法人は24年7月に理事会で改正検討委を設置。学友会・院生協議会連合会やアジア太平洋大の学生、中高生、外部有識者からの意見も聞いて改正案を策定し、25年4月25日に学内向けポータルサイトに掲載した。

 改正案には「多様性を尊重」「ひとりひとりに宿る創発性を貴ぶ」「自己の成長と包摂的な社会の実現に努める」「新たな共生価値をもたらす知的創造に果敢に挑む」などの文言が新たに入った。一方、現行の「第2次世界大戦後、戦争の痛苦の体験を踏まえて」「自主、民主、公正、公開、非暴力の原則を貫き」といった文言はなくなった。第二次大戦の文言について法人は「教学理念である『平和と民主主義』は第二次大戦の経験のみが反映されたものではない。『痛苦』という文言は抽象的で、立場の違いにより捉え方が異なり適切ではないと判断した」という。

 法人は6月6日まで学内から意見を募集し、それを踏まえて修正した後、7月の理事会で最終決定し、10月18日の立命館創始155年・学園創立125周年記念式典で改正憲章を発表する計画だった。

 これに対し、第二次大戦の文言を「戦争の惨禍と歴史的教訓を端的・明確に伝え得る表現」と評価し、削除するのは歴史修正主義的だと反対する学生らが有志の会を発足。改正案の見直しを求めて5月からオンライン署名を呼びかけ、1万7595人の署名を7月10日に法人に提出した。立命館大教職員組合も、法人からの説明や意見聴取を受けておらず、改正プロセスの透明性と合意形成に不備があると懸念を表明していた。

立命館大衣笠キャンパスに掲示されている立命館憲章=京都市北区で2025年12月4日、大東祐紀撮影

 背景には立命館も戦争に協力した歴史がある。昭和初期、京都御所を警備する「立命館禁衛隊」を組織。1941(昭和16)年には国防学研究所を設置し、満州事変の首謀者・石原莞爾(かんじ)を初代所長に迎えた。学徒出陣や学徒動員で3000人以上の学生を戦場や軍需工場に送り、台湾や朝鮮の留学生が皇軍に志願しないことを理由に大量に除籍処分にした。

 これらの意見も受け止め、7月の常任理事会で「期日にこだわらず柔軟に議論を続けよう」と判断。改正案では「第2次世界大戦の痛苦の体験を踏まえ、歴史を省みて戦争と暴力を否定し」を加え、「自主……非暴力の原則を貫き」も構成を改めて取り入れた。

 法人は取材に対し「改正案では戦争の歴史への反省を含意しつつも全体の構成と表現を改めたことによる変化だったが、第二次大戦、非暴力といった言葉への思いが非常に強く、大事にしている人がいることを再認識した」と説明。「(学生・院生、小中高校生、教職員で計5万人超の)構成員みんなに受け入れられ、愛される憲章にしたい。一人でも多くに納得してもらい、自分ごととして捉えてもらえれば」としている。

立命館大衣笠キャンパス=京都市北区で、鶴見泰寿撮影

 修正案について有志の会と教職員組合は「声が一定程度反映され、一定の前進」「構成員や関係者の強い懸念が法人を動かした」などと評価。一方で▽歴史的視点がなお不十分▽全構成員自治に必要な教職員組合との懇談会を経ていない(4日時点)――などとして、改正の必要性も含めた十分な説明と論議を訴えている。

 法人は修正案についてキャンパスごとにオンラインも含めた懇談会を開くなどして意見を募集しており、集約した上で新憲章が策定できれば公表する方針だ。【太田裕之】

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