徳永製茶の店舗前に立つ徳永和久さん=佐賀県嬉野市で2025年8月1日、小山由宇撮影

 日本茶の飲み方が変わってきている。ペットボトル緑茶や抹茶は堅調だが、急須に湯を注いで飲むリーフ茶(茶葉)の消費は減少傾向にある。佐賀県嬉野市で茶の製造・卸売業を営む徳永和久さん(47)は「茶葉から飲む文化」の復権を目指す。【聞き手・小山由宇】

 私たちの仕事は、日本酒なら造り酒屋や杜氏(とうじ)に当たります。「茶匠」や「茶師」と呼ばれることもあります。

 茶農家は茶を育て、収穫した茶を蒸すなどして、お茶の原料となる荒茶を作ります。私たちは仕上げを担当する職人です。荒茶の特性を見極めて焙煎します。温度が0・1度違うだけで味が変わるので、何度も試飲して香ばしさとうまみの加減を探ります。茶農家を訪ね回り、荒茶の工程や肥料についてアドバイスをすることもあります。

茶畑に立つ徳永和久さん=佐賀県嬉野市で2025年8月1日、小山由宇撮影

 私たちはリーフ茶の品質を支えてきましたが、今は厳しい状況に置かれています。

 ペットボトルなど茶飲料の消費が増え、2007年にリーフ茶を逆転しました。最近のリーフ茶の消費額は、その頃の約3分の2まで減っています。抹茶ブームも影響しています。抹茶が売れて助かっている農家は多いですが、リーフ茶に回る分が減れば茶製造・卸売業にとっては大きな打撃となります。品質にも影響し、急須文化が危機に立たされかねない状況です。

 そこで私たちは、リーフ茶の魅力を改めて世の中に伝える事業を展開しています。ぬるま湯でいれるとうまみが強く、熱湯だとカテキンやカフェインなど渋みの成分が出てきます。リラックスしたい時はぬるめのお湯、目を覚ましたい時はカフェインが出る熱湯でいれるとよいです。

嬉野温泉公園(左)と公衆浴場「シーボルトの湯」=佐賀県嬉野市で2023年5月9日午後1時15分、田後真里撮影

 お茶のいれ方講習といった体験事業を行っており、おいしさや生活シーンに合わせたいれ方を楽しんでもらいながら、リーフ茶の魅力を発信しています。インバウンド(訪日外国人)を含め、地元の嬉野温泉には多くの観光客が訪れます。お茶の体験を通じて「自宅でもやってみたい」と思ってもらえたらうれしいです。お茶は茶葉からいれるのが一番おいしいです。

 海外展開も進めています。英国の格式ある食品審査会「Great Taste Awards」に応募し、25年は「ゆず緑茶」と「抹茶」で最高評価の三つ星を取ることができました。徳永製茶の販路を世界に広げ、日本の茶文化を支えていきたいです。

とくなが・かずひさ

 1978年佐賀県出身。大学卒業後、IT関連企業を経て2004年徳永製茶に入社。14年から社長。

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