
同性婚を認めない民法や戸籍法の規定は憲法違反かどうかが争われた訴訟で、東京高裁は「合憲」との判断を下した。一連の訴訟は全国5地裁で6件起きた。これで控訴審判決が出そろい「違憲」が5件、「合憲」が1件となる。
今後は最高裁が統一判断を示すとみられる。ただ、いずれの判決も国会での議論を求めており、その積み重ねは重い。いたずらに最高裁の結果だけを待つようでは問題だ。政府・与党も当事者の声に耳を傾け、同性カップルが安心して尊厳を持って暮らせる法制度に向け議論を始めるべきだ。
今の制度のもとでは同性カップルは配偶者として法定相続人になれず、税制上の優遇措置なども受けられない。5件の違憲判決は、同性カップルが置かれた状況とその不利益を重く見て、法の下の平等を定めた憲法14条などに反すると判断してきた。
一方、今回の東京高裁判決は、契約による代替や自治体独自のパートナーシップ制度の広がりで不利益が緩和される可能性を指摘。男女による子の生殖が国家や社会の維持に必要といった視点から、異性カップルと同性カップルとの区別的取り扱いは合理的な根拠に基づくなどと断じた。
同性婚を巡っては、過去に国会へ法案が提出されても審議されないままになってきた。今回の判決も「憲法は国会が審議を尽くした上で同性同士の家族に関する法制度の選択決定をすることを求めている」と述べ、このままいけば憲法違反の問題が生じることが避けられないと論じている。
これまでの違憲判決のなかでは、民法などを改正し同性間の婚姻を認める、婚姻と同等の制度を新設する、といった選択肢が挙げられたこともある。
性的指向は本人の意志によって変えられるものではない。自治体のパートナーシップ制度にはおのずと限界がある。いつまでもこの状況を放置することはできない。国会や政府の場での真摯な議論を求めたい。
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