四天王寺大(大阪府)と奈良地方気象台、奈良女子大付属小による「新しい防災教育」の取り組みとして奈良市百楽園1の同小で15日、雨量が増えると水の働きにどんな変化が起きるのかを調べる実験が行われた。砂場に蛇行する川と山を築いてじょうろで雨を降らせ、雨量と被害の関係を探った。教科書に沿えば川に絞った実験になるが、山がちな県内の自然環境を考慮して山の実験を加えた。
取り組んだのは5年月組。以前の授業では気象台の西川千尋さんが大和川大水害(1987年)と紀伊半島豪雨(2011年)を取り上げた。大和川大水害は河川の氾濫で1万2000戸以上の家屋が浸水。紀伊半島豪雨は約1800カ所で土砂災害が発生し、県内で24人の死者・行方不明者が出た。原因は同じ豪雨だが、平野と山間地という地形の違いが影響して被害形態は大きく異なる。
まず蛇行した川に雨を降らせた。じょうろ1杯だと水は砂に吸収された。だが、3杯の水を同時に流すとあちこちで浸食が生じ、川のカーブの外側を示す印が流された。再び水3杯を同時に流すと大規模な決壊が起きた。
次は山。家を示すピンが5カ所にセットされた。こちらも水1杯では大きな変化はないが、3杯の水を同時に流すと山に近い家の裏山が崩れた。再度、水3杯を降らせるとこの家は土砂にのみ込まれ、別の1軒の裏山も崩れた。山から離れた家は無事だった。
児童らはタブレット端末で動画や写真を撮影しながら実験を見守り、その後は撮影した映像を教室でモニターに映し出しながら気付いた点を話し合った。「じょうろ3杯だと大きく浸食されて土地が川になった」「川の外側は内側より浸食されやすい」「外側の堤防をより高くする必要がある」「山を削る働きも水が増えると強くなる」などと指摘した。
授業を見守った四天王寺大の仲野純章准教授は「実験は『流れる水のはたらき』という理科の単元に関するもの。防災教育を連動させると、水の供給元から水の流れ、流域といった系(システム)の中で起きるさまざまな現象が関連づけられていく。系として考える力を身に付けることがより多様で複雑な現象を理解し、想像する基盤につながる」と指摘した。【大川泰弘】
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