アメリカの猫は50~60%が肥満か太りすぎ(写真はイメージです) Jeremy Wilkinson-Unsplash

<成功すれば、猫に食べさせる量を減らしたり絶食させたりするストレスもなく、体重を減らすことができるかもしれない>

サンフランシスコのバイオ医薬品会社オカヴァ・ファーマシューティカルズは、肥満治療薬の「GLP-1」を皮下に埋め込んで猫の肥満症を治療する初の臨床試験を開始したと発表した。

猫の肥満は急増している。ニューヨーク・タイムズ紙によると、アメリカの猫は推定50~61%が太りすぎまたは肥満に分類されており、獣医師も飼い主も業界関係者も、食事や運動を越えた効果的な治療法の必要性が高まっていると指摘する。

GLP-1は人間の糖尿病治療や肥満症治療を一変させた。この治療薬をペットにも応用できれば、動物の健康の新時代が到来するかもしれない。

オカヴァは臨床試験の第一弾として、猫の肥満症、糖尿病、腎臓病治療を目的とする皮下GLP-1インプラント「OKV-119」を最初の猫に投与した。今回の試験は「ManagEment of OverWeight cats with OKV-119(OKV-119による過体重猫の管理)」、略して「MEOW-1」と名付けられ、家庭のペットを対象とする初のGLP-1減量試験と位置付けている。

猫の皮下に埋め込むOKV-119インプラントはヴィヴァニ・メディカルの特許技術「ナノポータル」を利用。人間の2型糖尿病治療薬として承認されているGLP-1受動体作動薬をインプラントあたり最大6カ月間放出して効果を持続させる。

GLP-1受動体作動薬は満腹感を促して消化を遅らせ、血糖値の調整を補う役割を果たす。人間向けには「オゼンピック」「ウゴービ」などの治療薬が最近、減量目的で広く使われるようになった。ペット向けのOKV-119の成分は、人間向けのGLP-1治療薬に使われるセマグルチドやチルゼパチドではなく、エキセナチドを使用している。

毎日あるいは週ごとの注射ではなく皮下インプラントとしたのは、定期的な投薬を続けることの難しさに対応し、1回の埋め込みで最大6カ月間、治療効果を持続させる目的がある。

今回の治験はアメリカ獣医師会に臨床試験登録され、アメリカ食品医薬品局(FDA)の動物用新薬研究申請に基づき実施されている。

結果は2026年夏に出る見通しで、成功すれば、次は犬を対象として同様の治験を行う。

オカヴァ・ファーマシューティカルズのマイケル・クロッツマン最高経営責任者(CEO)はプレスリリースでこう述べている。「カロリー制限や絶食は、猫の寿命を延ばし、代謝の健康を改善するための最も確立された手段のひとつだが、同時に最も継続が難しい方法のひとつでもある。OKV-119には、インスリン感受性の向上、脂肪量の減少、エネルギー代謝の効率化など、絶食と同じような生理学的効果が期待できる。給餌習慣を大きく変える必要はなく、給餌をめぐって人間と動物の絆がかき乱されることもない」

治験を率いるフロリダ大学の獣医師、チェン・ギラー氏はニューヨーク・タイムズ紙にこう語った。「カプセルを皮下に埋め込んで、6カ月で猫の体重が減る。まるで魔法だ」

猫の飼い主のサバンナ・ティルキングさんは「うちの子はほとんど1日中寝てばかりでゴロゴロしている。もし獣医師に『糖尿病です。ほかの治療法は全て試しました。これを検討しましょう』と言われたら、絶対そうする」とCBSニュースにコメントした。

ABCニュースによると、オカヴァはOKV-119について、2027年から2028年の間にFDAの承認を目指す。承認された場合、飼い主の自己負担額は月額100ドル前後になると予想されている。

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