野ネズミの一種で秋にクリを食べるアカネズミ=梶田瑠依・名古屋大客員研究員提供

 雑木林の中でクリの実を食べたり集めたりする野ネズミは、実の良しあしを嗅ぎ分けているとの結果を、梶村恒・名古屋大教授らの研究チームが発表した。ガの幼虫が食べて傷んだものを避け、栄養価の高い無傷の実を効率よく選んでいることが示唆される結果という。

 野ネズミのうち、アカネズミとヒメネズミは秋になるとクリを食べたり、巣穴などに蓄えたりする。ガの幼虫はクリに入り込んで実を2~4割ほど食べ、残った部分も変色するなどして栄養価が下がる。ゾウムシの幼虫によって傷んだ実をより分ける場合があることは知られていたが、ガの場合については分かっていなかった。

 研究チームは2022年と24年の9~10月、愛知県豊田市にある名古屋大の演習林で、ガの幼虫が食べたクリと食べられていないクリを3個ずつ餌皿に乗せ、40メートル四方の対角線上に2皿置いた。計4カ月間で計144個を置き、延べ125匹の野ネズミを対象にした。

 撮影した映像を解析したところ、野ネズミは傷んでいないクリを先に持ち去ることが分かった。約半数の野ネズミは、実の匂いを嗅ぎ比べるような「調べ行動」を見せていた。この行為をした野ネズミはそうしなかった野ネズミよりも、傷んでいない実を持ち去る割合が22年には83%、24年は65%とより高かった。

 ただし、調べ行動をすると、数秒程度余計な時間がかかり、補食者に見つかるリスクや、ライバルに餌を奪われるリスクが上がる。そのため、周囲の環境に応じてするか否かを決めている可能性があるという。

 チームの梶田瑠依・名古屋大客員研究員は「野ネズミが蓄えた実は、食べられない場合には樹木の分布や新しい木の芽生えに影響する。傷んでいない実を選ぶことは森林の生態系にとっても重要な問題だ」と話した。

 成果は英科学誌サイエンティフィック・リポーツに掲載された。【渡辺諒】

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