岩手 滝沢 中学校の校内で副校長がクマと遭遇
防犯カメラに昇降口の付近をうろつくクマの姿
学校やその周辺でクマの目撃 全国で相次ぐ
北秋田 新学期で子どもたちにクマよけの鈴配る
北海道 中学校敷地内のヒグマ 発砲するも見つからず 電気柵設置
【専門家QA】学校のクマ対策は
今月18日午前8時ごろ、岩手県滝沢市の一本木中学校で「学校にクマがいる」という内容の連絡が生徒から職員室に寄せられました。すでに学校の敷地内にいたクマは、わずかな時間のうちに開けていた廊下のドアから侵入したとみられ、見回っていた副校長が体育館と校舎をつなぐ廊下で鉢合わせたということです。クマは副校長の姿を見ると驚いたような様子で、校舎の外に飛び出して、隣接する林の方向に向かい、姿が見えなくなったということです。当時、中学校は夏休み期間中で、駅伝部の生徒や教職員、あわせておよそ10人が学校にいましたが、けがはありませんでした。
一本木中学校 伊藤伸副校長「これまで周辺での目撃情報はあったが、校内に侵入してきたことはなかったので、驚いた。もし生徒にけが人が出たら大変なことになっていたと思うので、危機感を感じている」
学校では1人で登下校する生徒には教職員が車で併走するほか、今後、クマ対策のスプレーや爆竹の購入を検討しているということです。またドアからクマが侵入するのを防ぐため、現在、廊下と体育館のすべてのドアを閉めきっているということです。ただし、体育館にはクーラーが設置されておらず、子どもたちが熱中症になるおそれもあるとして、体育の時間中は水分を補給するタイミングを増やすほか、送風機を設置したり、窓を5センチほど開けて風を通したりする対策を取っています。
学校が設置した防犯カメラには1頭のクマが突然、昇降口の前に飛び出してうろつき、侵入口と見られる廊下のドアがある方向に向かっていく様子が確認できます。また、クマの姿を見た生徒が昇降口から顔を出して様子をうかがったり、外にいた生徒らが走って校舎内に駆け込んだりする様子が確認できます。その後、クマは廊下のドアがある方向から再び、昇降口前に姿を現し、林がある方向に向かって走って行きました。
NHKが全国の各放送局の取材を通してまとめたところ、北海道や東北地方を中心にことし4月から25日までに学校やその周辺で目撃されるなどしたというケースが少なくとも39件あり、夏休みが終わり学校の子どもたちをクマからどう守るか課題となっています。NHKはクマの出没情報が相次ぐ北海道と東北地方を対象に、学校やその周辺での目撃情報について取材したところ、秋田県教育委員会が幼稚園や小中学校、高校とその周辺でのクマの目撃件数を把握していて、ことし4月から今月22日までに65件でした。NHKは秋田県以外の都道府県について、学校やその周辺でクマを目撃したり足跡を確認したりしたというケースを、各地の放送局の取材を通してまとめました。それによりますと小中学校、高校の校内やその周辺、おおむね1キロの圏内でことし4月から25日までに北海道や東北地方を中心に少なくとも39件ありました。都道府県別の目撃件数(NHKまとめ)▽北海道…12件▽岩手県…7件▽山形県…6件▽青森県…4件▽宮城県…3件▽福島県…2件▽栃木県、新潟県、石川県、長野県、滋賀県…1件このうち山形県では25日、部活動のため学校に向かっていた中学生が道路上でクマと鉢合わせし、走って逃げたということです。また校内で目撃や足跡が確認されたというケースは6件あり、北海道では同じ中学校の敷地内で今月20日と23日にクマが確認され、青森県の中学校では先月、校舎の裏にある階段にクマがいるのを生徒が目撃したということです。児童や生徒がけがをしたケースは確認されませんでした。各地の学校ではクマが出没したという情報があると集団下校や保護者に送迎を依頼するなど対応していて、夏休みが終わり学校で子どもたちをクマからどう守るか課題となっています。
クマの被害や目撃が相次ぐ地域の学校では、2学期を迎えて子どもたちが学校に戻ってくる中、警戒を強めています。このうち秋田県北秋田市の鷹巣小学校では26日朝、およそ300人の子どもたちがクマに警戒をしながら集団で登校してきました。
そして体育館で開かれた始業式で湊貞宗校長は「大切なのはクマに出会わないことです。絶対に1人で帰ったり、夜、出歩いたりしないようにしてください」と注意を呼びかけました。続いて子どもたちは教室に移動し担任の教員から一人一人にクマよけの鈴が配られ子どもたちは早速、ランドセルなどに取り付けていました。
小学1年生の男子児童は「クマの被害は怖いですが、大きい音が鳴る鈴をもらえて安心しました」と話していました。北秋田市によりますと、ことしに入って25日までのクマの目撃情報は264件で、去年の同じ時期に比べおよそ2.5倍に増えるなどクマへの警戒が高まっていて、2学期を迎えおよそ1300人の児童にクマ鈴を配布したということです。また学校周辺での目撃情報も増えていて、秋田県教育委員会によりますと幼稚園や小中学校、高校のおよそ500メートル圏内での目撃情報は、ことし4月から今月22日までに65件と昨年度1年間の58件をすでに上回っているということです。県教育委員会は「これから秋を迎え、さらに被害や目撃が懸念され中、各学校には登下校時の安全確保を呼びかけている」としています。
北海道初山別村では今月23日、地元の猟友会の男性が中学校の敷地内にいるヒグマを見つけて発砲しました。弾はでん部の付近に当たりましたが、ヒグマは山の方向に逃走し警察などがパトロールを強化しましたが今も見つかっていません。村と道、そして地元の猟友会は、撃たれたヒグマが再び中学校に近づくのを防ぐためきのう午後、学校の周囲におよそ250メートルにわたって電気柵を設置しました。この中学校と隣接する小学校では、すでに新学期が始まっていて、当面、保護者が車で子どもたちを送迎することにしています。初山別村農林畜産係の籾山幸久係長は「ヒグマが確実に人里に近づいていると感じる。学校が近いので、子どもや近隣の住民に人身被害が出ないようにできるかぎりの対策をしたい」と話していました。
新学期にむけてクマへの安全対策を進めるため、北海道教育委員会は18日、各学校に対して異例ともいえる通知を出しました。学校にはこれまでも不審者などに対応するマニュアルはありますが、今回のようにクマに対するものは全国的に珍しいということです。具体的には登下校前にクマが出没する危険性がある時は保護者による車での送迎や自宅でのオンライン授業、さらに臨時の休校を検討するよう求めています。また屋外活動についても子どもたちの安全が確保できない場合は中止することなどを求めています。
クマが学校に出没する事態となる中、子どもたちの安全をどう守るべきなのか。学校現場の安全管理に詳しい常葉大学教育学部の木宮敬信教授に聞きました。Q.学校内にクマが侵入する事案も起きていて、不安を感じる保護者も少なくない。クマに人が襲われるケースも起きる中、子どもに被害が及ばないとも限らない。クマの生息地という地域差はあるが、これまで熊が見られなかった地域でも目撃情報などが相次いでいる。以前とは段階が変わっていて警戒を高めなくてはいけない状況になっている。Q.どんな対策が求められますか。不審者対策と同じで大きくは2つ。1つ目は「学校の中に入れない」こと。フェンスや柵で学校を囲むなど侵入を防ぐようにすることがまずは大事だ。そしてもう1つは「侵入後のフローを決める」こと。万が一、クマが校内に入ったとき子どもたちを安全にどう避難させるか、事前に話し合って決めておくことが大切だ。不審者への対策はマニュアルを策定し、先生たちも研修や訓練を重ねている。こうした不審者対策を転用する形で、クマ対策を考えると良いのではないか。Q.今後、学校現場はどのように対策を進めていくべきですか。多くの学校現場はお金と人手が足りないという現状があり、フェンスや柵などハード面の整備に国や自治体の支援は不可欠だ。学校やその周辺でのクマの目撃情報などを国が主導的に集約し、対策に生かしていく必要がある。
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