通勤電車の電車内や食事中、果ては深夜の寝床まで、気が付くと手に取っている。
いくら便利とはいえ、一日の大切な時間をスマートフォンなどのデジタル機器に支配されてしまっていないだろうか。
家族が集まるお正月。年始こそデジタル機器漬けになった日常をデトックス(解毒)しませんか――。
日本デジタルデトックス協会理事で、「戦略的暇」の著書がある森下彰大さん(33)は呼び掛ける。
世界に広がる子どものスマホ規制
「SNS(交流サイト)やゲームはそもそも依存性が高いんです」
森下さんにデジタル機器の功罪を尋ねると、依存のリスクについて語ってくれた。
ワクワク感や他人とのつながり、役立つ知識も手軽に得られるデジタルコンテンツ。
子を持つ親にとっては、動画などを流せば小さな子どもも静かになる、便利なアイテムだが、子どもがゲームに依存してしまうケースも後を絶たない。
「大人は、がまんなどの感情コントロールをつかさどる脳の前頭前野が発達していますが、子どもは未発達で、やりたい気持ちを制御するのが難しい。『ここでやめよう』とならず際限なくやってしまう危険性があります」
SNSを巡っても、子どもへの影響を懸念する声は絶えない。
2025年12月10日、オーストラリアは16歳未満のSNS利用禁止法を世界で初めて施行した。米欧でも、若年層のSNS利用に対する規制が広がっている。
日本では愛知県豊明市が25年10月、全市民を対象に、余暇時間でのスマホやタブレット端末の使用目安を「1日2時間以内」と規定する条例を施行した。
これらの規制がなされるようになったのは、SNSにあふれる有害情報やゲーム依存から子どもを守ることが背景にある。
デジタルを休む=脳を休める
こども家庭庁の2024年度調査では、ネットを利用している小中高生(10歳以上)は98・2%に上る。
誰もがネット依存になりうる危険性にさらされるなか、家庭内ルールに加えて、有害コンテンツを制限するフィルタリングや視聴時間を制限できるスクリーンタイムなどで対策が講じられている。
そして、森下さんらが提唱するのがデジタルデトックスだ。
ある一定期間、意識的にデジタル機器を手に取らないことを決めるなどして距離を置くことで、心身のストレスを軽減し、現実世界でのコミュニケーションや自然とのつながりを再確認する。
「デジタルを完全に手放さなくてもいいんです。肝心なことはお休みするということなんです」
SNSであれゲームであれ、デジタル機器を操作している間は、脳は大量の情報をさばき続けている。
「脳が疲れていると、SNSの世界も楽しめないし、ゲームでも良い結果が出ないものです。3分間でもスマホを置いて脳を休めてください」
そうすることによって、気持ちがスッキリしたりストレスが減ったりする効果があるという。
ただし呼び掛ける際に気をつけなければならない点がある。
「そんなもの、やめなさい」と言わないことだ。好きなものを否定されると大人でも気分を害してしまう。反発を招かぬためにも「少し休もうよ」などの誘いかけが望ましいという。
大人も子どもも一緒になって
家族や親戚の集まる機会が多い年末年始。家族でできるデジタルデトックスの実践方法を聞いてみた。
みんなで、楽しくデジタルデトックスするのが成功のコツだが、「仕事で使うから」と、親はついつい言い訳してしまいそうになる。
だが「みんな公平に手放しましょう」と森下さん。
「子どもにとって、自分に注意を向けられているかどうかが重要です。それがなければ、フィードバックがすぐに返ってくるデジタルの世界に行ってしまいます」
そしてデジタルデトックスを行う際に効果的なのがアナログな遊びに全員で取り組むことだ。
木製の棒を倒して得点を競うモルックなどの野外ゲームやボードゲームなどが幅広い年代で参加でき、おすすめだ。
乗り物、寝床、トイレの共通点
なんとか正月の間にデトックスできて「お休み」しても、元に戻ってしまうのはなんだかもったいない気もする。
森下さんは、宋の詩人・欧陽脩(おうよう・しゅう)が、よい考えが浮かぶ場所として挙げた、馬上(乗り物)、枕上(ちんじょう、寝床)、厠上(しじょう、トイレ)の「三上」の例えを引き合いに出した。
「いずれもぼんやりしやすい場所です。脳科学でも、ぼんやり中に脳内が整理されることが示唆されています。だから今年は、仕事や勉強のパフォーマンスを上げるため、この1カ所くらいはスマホを持ち込まないことを目標にするのはどうでしょうか」【山崎明子】
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