復興はまだまだ。忘れないでほしい――。石川県輪島市の門前中学校の3年生が、町のシンボルである総持寺祖院の被災状況や住民の寺への思いなどを発信することで、ふるさとの復興を後押しした。「禅の里新聞」や、寺の廃棄ろうそくからハートやお菓子の形をしたキャンドルを作り、修学旅行先の東京で配布したのだ。
2024年元日の能登半島地震で、総持寺は国重要文化財の大祖堂が準半壊するなど、復旧に総額約38億円もかかるほどの被害が出た。「07年の地震で被害を受けた所がやっと修復されたと思ったら、また悲惨な姿に……」と、松本弥大(やひろ)さん(15)は語る。
寺だけではない。町内の道路は大きな通りこそ元に戻ったが、一本裏に入ると、まだでこぼこしている。そのふるさとの状況をどう伝えるのか。
同中は24年10月、当時の3年生が修学旅行先の東京にある石川県のアンテナショップ「八重洲いしかわテラス」で、地震の被害について報告してきた。今年度の3年生、山崎結生(ゆうき)さん(15)は、先輩から「東京の人は(能登はすでに)復興していると思っている」と聞かされた。「ただ伝えるだけでなく、形として残るものを」。そう考えた3年生は、新聞とキャンドル作りに取り組んだ。
新聞には寺の被害のほか、寺の歴史、住民の寺や町の復興への思いなども盛り込んだ。被害状況をまとめた横道悠輔さん(15)は喪失感を抱えつつも、07年の地震後に耐震補強された山門が今回は無事だったことに「日本の技術はすごいと思った」と一筋の救いを見いだした。
歴史好きという中田颯汰さん(15)は「寺は700年の歴史を誇る。何を伝え、何を削るか、悩んだ」という。「住民の思い」を担当した竹中柚葵(ゆずき)さん(14)は「アンケートに39人も答えてくれた。思っていたよりも協力してくれた」と感謝。夏休み中もキャンドル作りに奮闘した倉澤梨紗さん(15)は「ピンクの肉球形を作ったとき、好きな色を出せて楽しかった」と振り返った。
生徒らは、修学旅行初日の25年10月6日、いしかわテラスで新聞とキャンドルを配って報告会への参加を呼びかけた。坂口光輝さん(15)は「見知らぬ人ばかりでずっと緊張感マックス」。森果笑(かえ)さん(15)は「通り過ぎる人も多かったが、意外ともらってくれた」と手応えを感じた様子だった。報告会には約30人が参加し、最後まで聴き入ってくれたという。
修学旅行の後、同中に一通の手紙が届いた。新聞などを受け取り、報告会にも出席した人からで、「能登について考えるきっかけになった」と感謝の言葉がつづられていた。3年生は「無駄じゃなかった。何かしら地元に貢献できた」と自信を深めた。
中学1年の時に東京から移住し、新聞づくりでは住人へのインタビューを担当した杉本和音さん(15)は「今後、一度は離れるかもしれないが、また門前に戻ってきて、多くの人に訪れてもらえるような場所をつくってみたい」と語った。担任の横町柚里佳さん(24)は「人前で発表することが苦手な子も多い。それでも地域のためと頑張ってくれた」と、教え子の成長に目を細めていた。【衛藤達生】
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