1975年創業の広島県福山市の老舗イタリア料理店「サンマルコ」が25日に閉店する。本格的なグラタンやピザなどを手ごろな値段で味わえ、デートスポットとしても市民に親しまれてきた。店長の田中勝利さん(82)は「複雑な心境だが最後までお客さんの愛情を感じられた」と笑顔で語った。
同店は75年8月にJR福山駅前で開店し、運営会社の従業員だった田中さんが店長になった。当時、市内にイタリア料理店は珍しく行列ができるほどの人気だった。
約25年前に近くに移転し、田中さんがオーナーを引き継いだ。経営は厳しかったが、「お客さんに喜んでもらうことが一番」と、良心的な価格と満足する量にこだわった。
同店は、お笑いコンビ「千鳥」の大悟さん(46)が初デートした店としても知られる。大悟さんは2017年にテレビ番組の収録で再訪。その時の写真とサインは店内の壁に飾られている。
1月中旬に店を訪れた福山市のライター、浅野陽介さん(47)にとっても妻との初デートの店だった。「思い出の店がなくなるのはさみしい。グラタンとドリアの両方を楽しめるランチなど貴重な店だった」と惜しむ。
田中さんは、月1回と元日の休み以外は自宅がある岡山県倉敷市から通い続けた。しかし、コロナ禍で借り入れが増え、3年ほど前には妻利子さん(82)の肺がんが発覚。自身も高齢になり、「今が一番いい機会」と創業50年を機に引退を決めた。後継者は見つからず、店を閉じることになった。
今月に入って、閉店を知った客が次々と来店。ランチ営業の最終日となった16日は長い列ができた。店内には、親子3代で通った常連客から贈られたバラが飾られている。
「胸の内は寂しさと妻とゆっくりと過ごせるようになる安心感とで複雑です。でも最後までお客さんを笑顔にしたい」。店は25日までディナー営業を続け、半世紀の歴史に幕を閉じる。【関東晋慈】
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