アメリカの薬物危機に立ち向かう「リハビリ王」リチャード・テイト CARRARA TREATMENT WELLNESS & SPA

<25年間、薬物依存とホームレス生活に沈んだ男がいる。リチャード・テイトは更生後、セレブ御用達の高級リハビリ施設で成功を収めたが、引退ではなく「次の使命」を選んだ。フェンタニル危機が深刻化するアメリカで、トラウマを癒やし自己受容へ導く新たな回復施設を立ち上げ、最前線に立ち続けている>


▼目次
転機は導師との出会い
カギは自分を愛すること
金持ちでも回復は困難

リチャード・テイトは人の10倍も生きてきた男だ。依存症のホームレスとして25年間薬漬けだった彼は、起業に成功して巨万の富を築き、今は使命感に燃えている。かつての自分のような人たちを救う場をゼロからつくり上げようというのだ。

「リハビリ王」の異名で知られる59歳のテイトは、セレブ御用達のリハビリ施設「クリフサイド・マリブ」を立ち上げ大成功した。2018年にこの施設を記録的な億単位の価格で売却した後は快適な隠居生活を満喫できたはず......。

ところが彼は新たに2カ所のリハビリ施設の経営を手がけ、共著書を世に出し、ポッドキャストで発信まで始めた。その原動力は? 目的、信念、そして彼が「未完の仕事」と見なす課題への献身だ。

「私は薬物依存で人生の25年間を無駄にし、他の人たちの治療に22年間を費やしてきた」と、テイトは本誌に語った。「都合47年。今の私は史上最大の奇跡だ」

「フェンタニル危機は過去に例のない深刻な問題」本誌インタビューに答えるテイト

テイトはロサンゼルスのエンシノ地区で育った。「物質的には恵まれていたから幸福な子供時代を送ったと思われるかもしれない」

だが家庭内には暴力が吹き荒れていた。「毎日殴られた。私だけじゃない。みんなだ。殴られるか、罵られるか。『おまえはバカか』『おまえなんか生まれなきゃよかったんだ』と罵倒された」

彼が17歳になる頃には父親は家を出て行き、残された一家は立ち退きに遭い、彼が大好きだった祖父は亡くなった。3カ月足らずの間にこうした出来事が相次ぎ、「もう限界だった。私は壊れた」と、彼は言う。「その後の25年間ドラッグとアルコールで自分の命を削り続けた」

彼が溺れた薬物はクラック・コカインだ。「1日1オンス(約30グラム)吸引した。毎日欠かさずにね」と自嘲気味に言う。「薬物とアルコールを30日断つのに3年かかった。今日から断とうと何度も誓ったが、そのたびに挫折した」

テイトが開いた更生施設カララ・トリートメント・ウェルネス&スパはセレブにも人気だ CARRARA TREATMENT WELLNESS & SPA

それでも彼の回復を決して諦めなかったセラピストたち、そして本人は自分を信じられないのに、「彼なら変われる」と信じてくれた人たちのおかげで更生できた。

「セラピーを受け始めて1年と3カ月で光が見えてきた」

依存症に関する著書がある心理療法士のマーガレット・フェッティングが正しい道に導いてくれたと、テイトは感謝する。セラピーを受け、断酒会のアルコホーリクス・アノニマス(AA)の集まりに参加し、依存症から回復を目指す人たちと共同生活をする日々を送り、ようやく衝動を克服できたのだ。「全て必要なプロセスだった」と、彼は言う。

テイトは自分が完全に立ち直る前から他の人たちを助け始めた。AAの集まりに初めて参加した人を朝食に誘い、散髪させて新しい服を着せ、リハビリ施設に連れて行って最初の1カ月分の滞在費は自分が払った。「自分のことより仲間の回復のほうが大事だった」。彼のこうした性分がその後の人生を懸ける大事業につながった。

自尊心が薬物依存から脱するカギだとテイト(左端)は考えている CARRARA TREATMENT WELLNESS & SPA

転機は導師との出会い

05年にクリフサイド・マリブを開設したときには、リハビリ施設の運営経験はゼロだった。ただ、依存症の苦しみは身をもって知っていた。

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【note限定公開記事】元ホームレスの「リハビリ王」が挑むフェンタニル危機...回復施設をゼロから築いた男


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