「問題に立ち向かうことができない」といった中年期の鬱症状は認知症につながりやすいという NEW AFRICA/SHUTTERSTOCK
<長期追跡調査でイギリスの研究チームが明らかにした、うつ症状と認知症リスクの意外な関連性──>
英ユニバーシティー・カレッジ・ロンドン(UCL)の研究チームによって、中年期の鬱に関連する6つの症状が、後の認知症リスクを高める可能性があることが分かった。
認知症患者は世界に推定5500万人以上。今後25年間で1億5300万人にまで増えると予測される。まだ治療法は確立されていない。
今回の研究の目的は、中年期に把握し修正することで、神経変性疾患の発症を遅らせたり予防したりできるリスク要因を特定すること。医学誌ランセットの委員会は2024年、鬱病を「認知症の発症につながり得る中年期のリスク要因」と位置付け、これを「修正可能」だとした。
今回の研究は中年期の鬱と老年期の認知症との関連を、さらに検証しようというものだ。
研究では1985〜88年に35〜55歳だったイギリスの成人5811人を対象に、そのとき収集した公衆衛生データを分析し、その後97〜99年に同じ対象者を追跡調査したデータも検討した。この調査で鬱症状を5項目以上訴えた人は「鬱状態」と分類した。
さらに23年まで追跡調査を続け、どれだけの人が認知症を発症したか、発症した場合にはどのタイプだったかを調べた。20年以上の追跡期間に、対象者の10.1%が何らかの認知症を発症していた。
早期予防に可能性を開く
研究チームは中年期の鬱に関連し、認知症リスクの上昇を示す指標として次の6つの鬱症状を特定した。
①自信が持てない/②問題に立ち向かうことができないと感じる/③他人に温かい気持ちや愛情を抱けない/④常に神経が張りつめて不安を感じている/⑤物事の進め方に満足できない/⑥集中することが難しい。
「今回の研究は、認知症リスクが結び付いているのが鬱病そのものではなく、いくつかの鬱症状であることを示している」と、論文の筆頭執筆者であるフィリップ・フランク上級研究員は言う。
「症状レベルで捉えることで、実際に認知症が発症する何年も前から、この病気になりやすい人を明確に把握できる」
「中年期に多くの人が経験する日常的な症状には、脳の長期的な健康に関する重要な情報が含まれているとみられる。そこに注意を向けることで、早期予防の新たな可能性が開けるかもしれない」
追跡調査の開始時に60歳未満だった人に限ると、中年期の鬱と認知症リスクの関連は、前述の6つの症状で「完全に」説明付けられたという。
中年期に鬱状態と分類された参加者は、後に認知症を発症するリスクが27%高かった。ただしこのリスク上昇は、60歳未満の成人については全て6つの鬱症状で説明できることが分かった。
特に「自信が持てない」「問題に立ち向かうことができない」という感覚を持つ人の場合、リスクは約50%高まっていた。
中年期の鬱と高齢期の認知症との関連の根底に、特定の鬱症状があるかどうかを検証した大規模な長期追跡研究は、これが初めてだ。ただし、研究参加者の71.7%が男性であり、中年期の鬱が女性の脳に及ぼす影響についてはさらに詳しく検討する余地がある。
Reference
Frank, P., Singh-Manoux, A., Pentti, J., Batty, G. D., Sommerlad, A., Steptoe, A., Livingston, G., Howard, R., & Kivimäki, M. (2025). Specific midlife depressive symptoms and long-term dementia risk: A 23-year UK prospective cohort study. The Lancet Psychiatry. DOI: 10.1016/S2215-0366(25)00331-1
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