教習生を指導するベトナム人指導員のレティー・トゥイさん(右)=伊勢市のほめちぎる教習所伊勢で2026年1月12日午後2時14分、渋谷雅也撮影

 タクシーやバス、トラックなど輸送業界で人手不足が深刻化する中、三重県伊勢市の自動車教習所「ほめちぎる教習所伊勢」が、外国人ドライバーの育成支援に力を入れている。自動車教習に特化した独自の翻訳アプリを開発するなど、積極的に取り組んでいる。

 「ほめちぎる教習所伊勢」は文字通り、ほめて伸ばす指導をモットーにし、若者に人気だ。

半年以上の予約待ちも

 人手不足をふまえ、外国人の育成に乗り出しており、母国語でも安心して講習を受けられる仕組みを作ろうと、翻訳アプリを開発した。2020年10月から在留する中国人向けに教習を始め、24年10月からはベトナム人も対象にした。

 外国語で指導する教習所は全国的に少ない上「ほめて伸ばす」教習がSNSなどで広まると、希望する外国人が全国各地から集まるようになり、昨季(24年10月~25年11月)の入校者は通学と合宿を合わせて中国人が140人、ベトナム人が120人に上った。

教習所が独自で開発した翻訳アプリ=伊勢市のほめちぎる教習所伊勢で2026年1月12日午後2時10分、渋谷雅也撮影

 予約待ちが半年以上にもなる時期もあり、教習所副管理者の加藤真吾さんは「ありがたいことに一時期、一気に予約が来て、訳が分からない状態でしたよ」と振り返った。

 外国人教習は当初2人の指導員でスタート。現在の指導員は中国人6人、ベトナム人3人、中国語が堪能な日本人1人の10人にまで増え、日本語が苦手な教習生に対応する。

 一方で、日本語がある程度話せる外国人教習生は、日本人指導員が担当する機会が多くなる。すると、新たな課題も指摘されるようになった。日本人指導員から、外国人に、日本語で運転に必要な道路標識の意味や道路交通法の内容を正しく理解してもらうことは難しい、という声が上がってきたという。

 母国語の運転教本はあるものの、日本人指導員から「正確に交通用語を伝えるアプリがあったらいい」という声があったという。そこで教習所は言葉の壁を超えようと、24年に独自の翻訳アプリを開発した。

独自アプリ、全国へ普及

 通常の翻訳アプリとは違い、自動車教習所に特化した会話に対応できるのが特徴だ。例えば「はっしん」と声にすると、他のアプリでは「発信」と優先的に変換されることがあった。だが、独自アプリでは「発進」の表記が優先される。翻訳も中国語、ベトナム語のほか、インドネシア、ミャンマーなど計5カ国の言語に対応することが可能だ。

ほめちぎる教習所伊勢=伊勢市内の同教習所で2026年1月12日午後2時19分、渋谷雅也撮影

 運転教習時は、アプリを搭載したスマートフォンを教習車のダッシュボードに装着し、助手席に座る指導員が話した言葉を即時に翻訳して伝えられる。

 また、人工呼吸など応急救護の実習では日本人の指導員がワイヤレスマイクを使用して話すと、外国人教習生はアプリを通してスムーズに説明を理解しているという。

 アプリは現在、評判を聞きつけた北海道の教習所で利用されているほか、宮崎や高知などからも問い合わせがあり、全国各地に普及しつつある。加藤さんは「使いやすいと言っていただいています。教習生からもいい評判をもらっている」と話した。

 自動車の運転は移動の自由と利便さをもたらしてくれる一方で、一歩間違えれば取り返しのつかない事態を引き起こす可能性を秘めているだけに、交通ルールを正しく学ぶことが重要となる。ベトナム人指導員のレティー・トゥイさん(26)は「ベトナムと日本の交通ルールは違うから、理解してもらうためにしっかり指導していきたい」と話した。

 加藤さんは「これからも母国語で安心安全に教習を受けていただけるように努めていきたい」と気を引き締めていた。【渋谷雅也】

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