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<「なんとなくモヤモヤする」「理由はわからないけど疲れている」。そんな状態を放置すると、心は確実に消耗していく。涙や推し活とあわせて、心を立て直す実践的セルフケアを紹介する>


日々の忙しさに追われ、自分の「負の感情」を押し殺してはいないでしょうか。感情の無視は蓄積し、やがて深刻な燃え尽きを招く原因となります。そこで今、メンタル管理の鍵として注目されるのが、感情に名前をつけて手なずける「感情ラベリング」です。本稿では、『スタンフォード式 最高の休み方』より一部抜粋のうえ、涙によるデトックスや推し活の効果まで、心を守り、活力を取り戻す科学的な処方箋を紹介します。


感情的セルフケア─自分の感情を大切にする

私たちは日々、さまざまな感情を抱えながら生きています。

嬉しい、悲しい、悔しい、不安、焦り――

けれども忙しい日常の中では、そうした気持ちを「感じきる」余裕も、「言語化する」時間も取れないことが多くあります。


でも、感情は「ただある」だけではなく、理解されたい、感じてほしいと願っているのです。感情を抑え込んだり無視したりすると、心と体に負担が溜まり、やがてエネルギー切れや燃え尽き症候群へとつながります。

だからこそ、自分の感情と丁寧に付き合う「感情的セルフケア」が、休息や回復に欠かせない要素になります。

「なんだかモヤモヤする」「イライラしている気がする」

そんなふうに感情が曖昧なままだと、心は混乱し続けます。そこで役立つのが、「感情ラベリング(感情に名前をつける)」というシンプルなスキルです。

たとえば、「怒っている」ではなく、「悔しい」「無視されたようで悲しい」「期待していたからがっかりした」など、感情をより具体的に言語化することで、脳は安心し、ストレスのレベルが下がると報告されています。

心理学者ダニエル・シーゲルはこの方法を「Name it to tame it(名前をつけることで、感情を手なづける)」と表現しています。紙に書いてみたり、スマホにメモしてみたり、信頼できる人に話すだけでもOK。 大切なのは、自分の感情に「気づき」「言葉を与える」ことです。


泣ける映画で「心をデトックス」

心を動かされる映画を観て、自然と涙があふれてきた―そんな経験はありませんか? 私たちの社会では「泣くこと=弱さ」と思われがちですが、実は涙には脳と心を回復させる力があるのです。

私は、20年ほど前にアメリカ・セドナを取材で訪れた際、先住民の酋長にこう言われたことがあります。

「現代人は、心の汗をかかなくなっている」

悲しいとき、嬉しいとき、感動したとき、その涙は、心を浄化し、命のバランスを整える大切なプロセスなのだと、彼は静かに語ってくれました。実際、「感動による涙」にはストレスを軽減する効果があることが、学術研究でも報告されています。

山口県立大学の研究では、「玉ねぎを刻んで涙を流すグループ」と「泣ける動画を観て涙を流すグループ」の比較が行われました。どちらも同じくらいの涙を流しましたが、感動による涙を流した人々のほうが、心拍数が落ち着き、ストレス指標が有意に改善されていたのです。


現代は、映画館に行かなくても、スマホやパソコンで手軽に感動的なコンテンツに触れられる時代。「泣くこと」は、自分の中に溜まった感情をやさしく洗い流す、立派な感情的セルフケアです。

リラックスしたい夜や、気分がふさぎ込んだときこそ、あえて「泣ける時間」を自分にプレゼントしてみてはいかがでしょうか。


推し活がくれる、心のエネルギーチャージ

あなたには、好きなアーティストやスポーツ選手、キャラクターなど、"推し"はいますか? "推し"の存在は、ときに言葉にならないほどのエネルギーと希望を与えてくれます。

「『推し活』はただの趣味じゃない!」

と力説するのは、GLAYの熱狂的なファンであり、大手メーカーに勤める宮本さん。あるとき、どうしてもライブに行きたくて「この日、休めないなら仕事を辞めます」と上司に直談判したこともあるといいます。

「子どもがいる人にとっての運動会やお遊戯会と同じくらい大切なもの。それが私にとっての推し活なんです」

彼女は、GLAYの音楽に支えられながら日々の仕事にも全力投球し、結果的に異例のスピードで昇進を果たしました。近年では、「推し活」がメンタルヘルスに与える影響も注目されています。山口県立大学の調査では、「推し活によって前向きな気持ちになった」「生きるのが楽しくなった」と感じる人が多数を占めていました。

また、「仕事のモチベーションが上がった」「自分にとっての癒しの時間になった」といった声もありました。好きなスポーツ選手を応援することも、心のエネルギーを満たす一つです。

たとえば、2014年のソチ五輪の浅田真央さんの演技。ショートプログラムでの失敗から一転、翌日のフリーでは奇跡のような演技を見せてくれました。その姿に、テレビの前で涙を流した人も多かったのではないでしょうか。

努力する人が逆境を乗り越える瞬間は、私たち自身に「自分も頑張ろう」と前向きな力を与えてくれます。それが、推し活の最大の力かもしれません。

鈴木亜佐子『スタンフォード式 最高の休み方』(すばる舎)(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)

※当記事は「東洋経済オンライン」からの転載記事です。元記事はこちら。

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