
2019年10月に火災で焼け落ちた沖縄県の首里城で、26年秋の完成を目指して正殿の復元工事が進んでいる。建設会社の責任者は、約30年前の前回の復元工事にも関わっていた。
「維持管理をきちんとしたら数百年もつと思っていたのに」
復元工事の責任者を務める清水建設の川上広行さん(65)は、19年の火災にショックを受けた。
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首里城の正殿は15世紀から約450年続いた琉球王国の中枢だった。沖縄戦で破壊され、1992年に18世紀の姿で復元された。
川上さんは89~92年の前回の復元工事にも関わっていた。それまではビルの建設などを担当することが多く、木造建築は初めてだった。首里城について一から調べ、工法や工程で疑問点が出るたびに職人に質問した。
完成した首里城を見て「琉球王国時代の正殿をよみがえらせた」とうれしくなった。
その後、全国各地で病院や半導体工場などの工事に携わった。リゾートホテル建設のため、再び沖縄に赴任したのは2019年10月上旬のことだ。
首里城の火災が起きた10月31日、いてもたってもいられず城に向かった。3年かけて建てたものが本当に焼けてしまったのか。自分の目で確かめたかったが、規制線が張られていて近寄れなかった。
約半年後、焼け跡に立った。正殿に使われていた巨大な木材がほとんどなくなっていて、火災の激しさを実感した。
その後、22年からの復元工事で責任者を任された。「名誉なことでうれしかった。世間の注目が大きく、責任の重さも感じた」

工事には、前回の復元に関わった設計責任者や棟梁(とうりょう)も加わり、「順調に工事が進んでいる」と話す。ベテランの職人が若手に技術を伝承する場にもなっているという。
復元工事の過程を一般に公開する「見せる復興」にも力を入れる。「我々からしたら『見られる復興』で、前回よりも緊張感があります」
そして何よりも防火への思いが強い。「木造建築は火災が一番怖い。火災だけは起こしてはいかん」と力を込めた。
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Aストーリーズ「燃え落ちた宝」初回へ
Aストーリーズは、多彩なテーマでお読みいただける朝日新聞えりすぐりの連載シリーズです。首里城の火災が起きた2019年、日本の文化財の防火政策が大きく変わりました。浮かび上がった課題と、対策に動く人びとを追います。
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