開封したチョコレートは虫の混入の危険性が高い。虫がいるかどうか見分けるポイントは?(写真はイメージ)=ゲッティ
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 バレンタインデーが近づいてきた。チョコレートを手作りしたり、買い求めたりする人が多くなる季節だ。

 チョコレートは一度に食べ切ることは少なく、冬場は常温で保存することもあるだろう。

 ただ、専門家によると、長く保存していたチョコレートは「要注意」だ。たとえ密閉された個包装でも、“チョコレート害虫”が中に侵入し、長期間潜んでいる可能性があるという。

 混入の経路や正しい保存方法を聞いた。

混入はほとんどが「家庭内」

 2024年秋、人気のチョコレート菓子に「生きた虫が混入していた」という投稿が交流サイト(SNS)上で話題になった。

個包装されたチョコレートでも、包装のわずかな隙間(すきま)から虫が混入する可能性がある(写真はイメージ)=ゲッティ
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 メーカー側は「昨年以前に発売された商品」と指摘。投稿者が長期間保管していたこと、保管中に虫が混入した可能性が高いことが判明し、投稿者は事実誤認があったとして投稿を削除した。

 「個包装されていても保管が長くなると、虫が混入する危険がある。虫に対する衛生管理の感覚が日本よりも甘い輸入のチョコレートにも注意が必要です」

 そう指摘するのは、食品害虫を研究する農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)の主任研究員、宮ノ下明大さんだ。

 国内でチョコレートをエサにすることが確認されているのは、ガのノシメマダラメイガ(成虫の体長7~8ミリ)や甲虫のタバコシバンムシ(成虫の体長2~3ミリ)、コクヌストモドキ(成虫の体長3~4ミリ)などの幼虫だ。穀物や乾燥食品にもつきやすい虫たちで、仮に人が食べても毒性はない。

 いずれも春から秋にかけて活動する。屋外から室内に入り込んだ成虫が、チョコレートの香りに誘われて製品近くに産卵。ふ化した幼虫がエサを求めて製品の中に侵入する。冬になると虫は活動しなくなり、食べ物の中で暖かくなるまで越冬するのだという。

個包装でも侵入できるワケ

 しかもこの虫たち、個包装されたチョコレートの中にも侵入する。どうやって入り込むのか。

チョコレートをエサにすることが確認されているコクヌストモドキの幼虫=農研機構提供
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 宮ノ下さんは、SNSで「虫が混入している」と話題になった製品について、ノシメマダラメイガの幼虫の侵入経過を研究したことがある。

 用意した三つのプラスチック容器に個包装されたミルクチョコレートを1個ずつ入れ、それぞれにふ化したばかりの1日齢の幼虫、15日齢、22日齢を複数匹ずつ入れる。約2週間の間に幼虫がどの程度侵入するかを10回にわたって調べた。

 すると、1日齢の場合は10回全てで少なくとも1匹以上、包装内への侵入が確認された。

 一方、15日齢と22日齢の場合、フィルムをかじった形跡は増えるが、1匹以上が侵入できた割合はそれぞれ50%、10%だった。

 この商品は外側にセロハンのフィルム、内側に紙と二重に包装されているが、密閉されていないため、においが外に漏れやすい。

 幼虫が小さいほど、においに誘引され、包装の隙間(すきま)から入ってしまうのだという。

 また、密閉された袋でも食い破って中に入り込むケースも報告されているという。

虫の好きなチョコレートは…

 また、アーモンドやドライフルーツ、クッキーなどが含まれたチョコレートのほうが虫がつきやすい。

「チョコレート害虫」として知られるガの一種ノシメマダラメイガの幼虫(老齢幼虫の体長は10~12ミリほど)=農研機構提供
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 宮ノ下さんは、ふ化したばかりのノシメマダラメイガの幼虫がエサによってどの程度発育が異なるか調べた。

 玄米だと成虫までの期間約28日、羽化率80%だった。チョコレートのみでは成虫になるまでに半年かかり、羽化率は8%にとどまった。

 一方、アーモンド入りチョコレートは成虫まで約2カ月、羽化率50%だった。

 「チョコレートだけでは栄養価が低く、本来はエサにはあまり適していません。発育が遅いから、チョコレートに長期間混入しているのですが、そのために人に発見される頻度が増え、『チョコレート害虫』として知られるようになった。皮肉な結果ですね」

冷蔵庫保管でも注意

 虫の混入を防ぐため、食品メーカーの明治は高温多湿の場所を避け、28度以下で保管するよう勧めている。開封後は賞味期限にかかわらず、早めに消費したい。

 冷蔵庫で保管する場合も、他の食品のにおい移りを防ぐために密封できる袋に入れて野菜室に置こう。

ノシメマダラメイガの幼虫が吐いた糸で白っぽくなったチョコレート。周囲に落ちているのは顆粒状(かりゅうじょう)のフン=農研機構提供
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 宮ノ下さんは、しばらく常温保管した後に冷蔵庫に入れた場合も注意が必要だという。

 ノシメマダラメイガの卵は低温に弱いが、幼虫は大きくなるにつれて寒さに強くなる。冷蔵庫(10度)に入れると活動量は一度減るものの、外に出し、温度が上がればまた活発化する。

 虫の混入を確認するチェックポイントは、「クモの巣」状態になっていないかどうか。

 ノシメマダラメイガの幼虫は糸を吐くため、チョコレートの表面にクモの巣のような糸がつき、白っぽくなる。赤っぽい顆粒状(かりゅうじょう)のフンも周りに目立つようになる。

 バレンタインの手作りチョコレートは、特に注意が必要だ。個人で作るものはラッピングしても密閉は難しい。

 宮ノ下さんは「手作りする人は念のため密閉性の高い容器に入れ、もらった人も早めにいただいたほうがよさそうです」とアドバイスする。【稲垣衆史】

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