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修二会が始まり、たいまつの明かりで浮かび上がった東大寺二月堂(長時間露光)=2026年3月1日午後7時6分、奈良市、内海日和撮影

 奈良市の東大寺二月堂で修二会(お水取り)の本行が始まった1日夜。「お松明(たいまつ)」が舞台を次々と駆け巡った後、二月堂の堂内では、こもりの僧「練行衆(れんぎょうしゅう)」が初夜の勤行を営んだ。

 午後9時10分過ぎ、二月堂に招かれる全国500以上の神々の名が書かれた「神名帳」の読み上げが始まった。独特の節をつけて、緩急のあるテンポで神々の名が唱えられていく。祈願文の一つ「加供帳(かくちょう)」の読み上げでは、同時代の政権担当者である高市早苗首相を始め、内閣の閣僚名などが次々と唱えられ、天下泰平を願った。

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「神名帳」を読み上げる練行衆=2026年3月1日午後9時20分、奈良市雑司町、向井光真撮影

 読み上げが終わると、祈りの先導役「大導師」を務める森本公穣・清凉院住職が、本尊の十一面観音菩薩(かんのんぼさつ)に向けて、ひときわ大きな声で祈願文「諷誦文(ふじゅもん)」を唱え始めた。

 諷誦文は、現在の問題を記す「現在句」と、亡くなった人たちを追悼する「過去句」からなる。「敬って白(もう)す 諷誦文のこと」との言葉から始まり、世相などが反映されている。

 現在句では、大規模な山林火災や洪水など、地球規模の異常気象が多発しているにもかかわらず、世界が危機感を共有できず、米国が気候変動対策の国際ルール「パリ協定」を離脱したことを踏まえ、「ああわれら人類は何と己の欲望にこだわり 他者を顧みざる愚かな存在なるや」と憂えた。

 過去句では、第2次世界大戦終結から80年以上経たものの、世界ではロシアによるウクライナへの軍事侵攻や、米国とイスラエルのイラン攻撃など、争いに満ちていることについて、「ああ人類は永遠に争ひを止めぬか 平和の尊きことに思ひ至らんか」と嘆き、犠牲者の安寧と遺族への慈悲を願った。

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「諷誦文」を読み上げる練行衆=2026年3月1日午後10時15分、奈良市雑司町、向井光真撮影

 堂内の「局(つぼね)」と呼ばれるスペースでは、一般の人が勤行を拝観し、神名帳や諷誦文の読み上げにじっと耳を傾けていた。

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東大寺二月堂でたいまつを持って走る童子=2026年3月1日午後7時9分、奈良市、内海日和撮影

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