ウオーキングは死亡リスクを下げ、健康を維持するためにも欠かせない=ゲッティ

 春から運動を始めたい、そんなときに手軽に始められるのがウオーキングだ。

 「1日1万歩」といった目標を立てるケースをよく聞くが、健康維持に効果がある歩数は実際のところ、何歩なのか。

 医薬基盤・健康・栄養研究所の渡辺大輝研究員(公衆衛生学)に聞いた。

歩数の平均値

2024年の性別、年代別の歩数の平均値。男性より女性の方が少なく、高齢者は現役世代に比べ、2000歩弱少ない=厚生労働省「2024年国民健康・栄養調査」より

 2024年の国民健康・栄養調査によると、1日の歩数の平均値(20歳以上)は男性が7763歩、女性が6495歩だった。

 20~64歳の平均値は男性8564歩、女性7287歩だが、65歳以上の高齢者はより少なく、男性6667歩、女性5429歩だった。

 平均歩数は近年、減少傾向にある。

 前述の調査では23年まで歩数の計測に振り子式歩数計を使っていたが、24年以降は三次元加速度センサー式歩数計を導入した。

 23年までの20歳以上の平均歩数でみると、1998年は男性8020歩、女性7319歩だったが、23年になると男性6628歩、女性5659歩で、1000歩以上減少している。

2011~23年(20、21年を除く)の歩数の平均値の推移。男女とも減少傾向だ=厚生労働省「2023年国民健康・栄養調査」より

 現役世代は在宅勤務やデスクワークの増加、高齢者は働き方の変化や宅配システムの発達などで外出頻度が低下していることが原因とみられる。

歩き過ぎても頭打ち

 では、健康維持に効果的な歩数はどのくらいなのか。

 渡辺さんらが23年に発表した65歳以上の日本人高齢者を対象にした研究では、歩数が多いほど死亡リスクが下がるという関係は、約5000~7000歩までは顕著に見られるが、それ以上の歩数でも死亡リスクを減らす効果は変わらないという。

 渡辺さんは「歩数が多いということは、身体活動量だけではなく、社会性が高いことも意味します」と解説する。

医薬基盤・健康・栄養研究所研究員の渡辺大輝さん=本人提供

 1日5000~7000歩を達成するには、自宅にこもっていては難しく、外出する必要がある。

 「実際に歩数が多い高齢者は、人付き合いや集まりへの参加などで活発に社交しています。それによってストレスの発散や孤独感の減少など心理的健康が向上することも死亡リスク軽減の理由の一つだと考えられます」

 24年度からの国の健康づくり計画「健康日本21(第3次)」でも、1日の歩数の目標値は、65歳以上は6000歩、20~64歳は8000歩としている。

 ただ、「どんな人生を送りたいか」で歩数の目安も変わると指摘する。

 「研究したのは、あくまで死亡リスクを減らすことを目的としたもの。肥満や糖尿病などの代謝性疾患など『病気を予防したい』ということなら、6000歩よりももっと歩いていいと思います」

歩くスピードは

 歩く速度も注意したい。

少し速く歩くことを意識してウオーキングすると健康維持に効果的だ(イラストはイメージ)=ゲッティ

 「遅すぎないスピードがいいです。多くの研究で中強度以上の身体活動が健康の維持・増進によいという結果が出ています。『中強度』とは少し速く歩く程度です」

 NGなのは「スマートフォンをいじりながら歩く」こと。「安全面からもやめてほしいのですが、スマホをいじりながら歩くと『低強度』の身体活動になってしまいます」

いつ歩けばいい?

 歩くのに適した時間帯はあるのだろうか。

 「食前や食後、時間帯で死亡リスクを比較した報告はなく、大きなくくりで言えば、いつ歩いても構いません」

20歳以上の歩数の平均値は減少傾向だ。健康維持のため、よく歩くことを心がけたい(写真はイメージ)=ゲッティ

 一方、食後の血糖値の上昇が気になる人は食後がいいという。

 「ご飯を食べると血糖値が上がりますが、食後に中強度以上の身体活動(やや速く歩くなど)をすると、血糖値が上がりにくくなるという報告があります。自分に合ったタイミングで歩いてください」

 特に、1日の歩数が目標値(65歳以上6000歩、20~64歳8000歩)を満たしていない人は、少しでも身体活動をした方が健康に良いという。「まずは、座っている時間の10分間を歩行に替えてみてください」と呼びかけている。【御園生枝里】

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