「和蝋燭(ろうそく)、せっけん、化粧品……。櫨(ハゼ)の復活で地域に灯(あか)りを」。中学生から社会人までが社会課題解決へのアクションを競う「SDGs探求AWARDS2025」(一般社団法人未来教育推進機構主催)で、愛媛県立大洲農高の「失われた櫨産業を未来へ 農家所得と里山を同時に再生するSDGs実践」が研究・調査部門の全国1位(優秀賞)に輝いた。15日にオンライン表彰式があった。
櫨はウルシ科の落葉高木・ハゼノキの別名。その実からできる木蝋(もくろう)は和蝋燭の原料となる植物性油脂として知られ、江戸期は伊予大洲藩の殖産興業に。明治期には地元からの輸出産業にもなったが、蝋燭の原料は次第に石油由来に変わり、櫨産業は衰退していった。
「持続可能な里山づくりのため、櫨栽培と木蝋生産を復活できないか」。大洲市や愛媛県の働きかけを受け、大洲農高は2022年、プロジェクトチームで研究を始めた。どうすれば発芽させられるかを知るところからのスタート。種を水酸化ナトリウム水溶液に浸して発芽率を繰り返し調べ、「水温25度以上、5~8%の溶液で5時間」という好条件を割り出した。
クローン苗の育成による増産を目指し、行政と共に接ぎ木研修会も開いてきた。現在は校内と大洲市、内子町の農地計約54アールで栽培。校内だけで年に約8キロの櫨の実を収穫できるようになった。
西洋蝋燭に比べ、和蝋燭は風で消えにくく、災害用の備蓄品としても優れていることに着目。「炎の美しさは人々を勇気づける」と、プロジェクトチームが命名した蝋燭セット「シン・和蝋燭」は協力メーカーによってこれまでに約200箱、31万円を売り上げることができ、地域に灯りをともした。セットに添える案内文や大洲地域の観光マップには同校が愛媛大と共同研究しているエコ素材の芭蕉(ばしょう)和紙(植物のバショウを原料とする和紙)を活用した。
歴史的建築が残る大洲城周辺の宿泊者を対象にした「文化体験ツーリズム」でも木蝋の価値を広くアピールできると考えており、チームは環境学習などの場で櫨の価値を訴えている。
環境に優しい天然素材として、肌に優しいせっけんづくりにも着手。「櫨は果樹農家の副収入として成り立ち、中山間農家875軒で普及すれば4億円の波及効果を生み出す」との地域経済活性化プランを明らかにしている。
「櫨の環(わ)」と題した同校プロジェクトチームの2年生、本田結愛(ゆあ)さん(17)は「櫨の可能性は無限大。化粧品、せっけんと、何にでもなれる」と魅力を語る。同、片山璃奈(りな)さん(17)は「まだ認知度は高くないので、環境学習やワークショップで櫨の蝋燭やせっけんの良さを伝えていきたい」と意気込んでいる。【松倉展人】
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